セリフ詳細

「では忌憚(きたん)なく申しあげる。――四海大いに乱るるの時、家祖、東呉を興したまい、いまや孫家の隆昌は、曠世(こうせい)の偉観といっても過言ではありません。一方、わが劉予州の君におかれても、草莽(そうもう)より身を起し、義を唱え、民を救い、上江遠からず曹操の大軍と天下をあらそっています。これまた史上未曾有の壮挙にあらずして何でしょう。然るに、恨むらくは、兵少なく、地利あらず、いま一陣にやぶれて、臣孔明に万恨(ばんこん)を託され、江水の縁を頼って、呉に合流せんことを衷心(ちゅうしん)ねがっているわけであります。――もし閣下が、偉大なる父兄の創業をうけて、その煌々(こうこう)たるお志をもつがんと欲するなれば、よろしくわが劉予州と合して、呉越の兵をおこし、天下分け目のこの(とき)にのぞんで、即時、曹操との国交をお断ちなさい。……またもしそのお志なく、到底、曹操とは天下を争うほどな資格はないと、ご自身、諦めておいでになるなら、なおほかに一計がなきにしもあらずです。それは簡単です」

作品タイトル:三国志

エピソード名:第94話、呉、紛糾

作者名:畑山  hatakeyama

126|歴史|完結|156話|1,238,935文字

三国志

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青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。