セリフ詳細

「火事場の中で、日頃の礼法をしていたら、寸歩もあるけますまい。あなたのおことばは天理人倫にかなっていますが、世はいま乱国、いわば火事場です。(くら)きを攻め、弱きを併せ、乱るるは鎮め、逆は取って順に従わす、これ兵家の任です。また民の安息を守るものです。蜀の状態はいまやそれに当っている。天に代って事を定め、事定まった上、報ゆるに義を以てしてもよいでしょう。今日もしわが君が蜀に入るを避けても、明日は他人が奪っているかも知れません――。族弟の縁をたいへん気にかけておられるようですが、劉璋には今申したとおり、ほかに方法を以て、仁愛を示されれば、あえて信義に(そむ)くことにはなりますまい。むしろそうした小義にとらわれておらるるこそ、兵家の卑屈と申さねばなりません」

作品タイトル:三国志

エピソード名:第118話、劉璋の決断、劉備の決断

作者名:畑山  hatakeyama

111|歴史|完結|156話|1,238,935文字

三国志

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青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。