セリフ詳細

「また、より以上、重要視すべきは、国そのものの態勢と四隣の位置でなければならん。わが呉は、南方は環海の安らかに、大江の(けん)は東方をめぐり、西隣また何の(わずら)いもない。――それに反して魏は、北国の平定もつい昨日のこと、その残軍離亡の旧敵などたえず曹操の破れをうかがっていることはいうまでもない。後ろにはそうした馬超(ばちょう)韓遂(かんすい)の輩があり、前には劉備、劉琦(りゅうき)の一脅威をひかえ、しかも許都(きょと)の中府を遠く出て、江上山野に転戦していることは――われら兵家の者が心して見れば、その危うさは累卵(るいらん)にひとしいものがある。……いわばこの際は彼みずから呉境へ首を埋める(つか)を探しにきたようなものだ。この千載一遇の機会を逸すばかりか、ひざまずいて、彼の陣前に国土をささげ恥を百世にのこすも是非なしと断じるなどは、まことに言語道断な臆病沙汰というほかはない。君公、願わくはまずそれがしに数万の兵と船とを授け給え。まずもって、彼の大軍を撃砕し、口頭の論よりは事実を示して、和平を唱える諸員の臆病風を呉国から一掃してごらんに入れます」

作品タイトル:三国志

エピソード名:第95話、周瑜の決断

作者名:畑山  hatakeyama

126|歴史|完結|156話|1,238,935文字

三国志

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青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。