セリフ詳細

「かくの如く、昨夜、老母より手紙が参りました。愚痴には似たれど、この老母ほど、世に薄命なものはございません。良人には早く別れ、やさしき子には先立たれ、いまは拙者ひとりを、杖とも力ともしておるのでした。しかるに、この文面によれば、許都(きょと)(とら)われて、明け暮れ悲嘆にくれておるらしゅうございます。元来、自分は幼年から武芸が好きで、郷里におれば郷党と喧嘩ばかりし、罪を得ては流浪するなど、母親に心配ばかりかけてきました。――それ故つねに心のうちでは、不孝を詫びておりまする。母を思うといても立ってもいられないのです。……実に実に……申し上げにくい儀にはござりますが、どうぞ拙者に、しばらくのお暇をおつかわし下さい。許都へ行って母をなぐさめたいのです。母に老後の安心を与え、母の行く末を見終りましたら、かならず再び帰ってきます。――わが君さえ棄て給わずば、きっと帰参いたしますゆえ、それまでのお暇をいただきたいのでございまする」

作品タイトル:三国志

エピソード名:第85話、徐庶

作者名:畑山  hatakeyama

111|歴史|完結|156話|1,238,935文字

三国志

223,921 views

青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。