セリフ詳細
「貴殿は、一を知って二を知りたまわず、敵を軽んずるのと、敵の虚を知るのとは、わけがちがう。そもそも袁紹は国土にめぐまれて富強第一といわれているが、国主たる彼自身は、旧弊型の人物で、事大主義で、新人や新思想を容れる度量はなく、ゆえに、国内の法は決して統治されていない。その臣下にしても、田豊は剛毅ではあるが、上を犯す癖あり、審配はいたずらに強がるのみで遠計なく、逢紀は、人を知って機を逸す類の人物だし、そのほか顔良、文醜などに至っては、匹夫の勇にすぎず、ただ一戦にして生捕ることも易かろう。――なお、見のがし難いことは、それらの碌々 たる小人輩が、たがいに権を争い、寵 を妬 みあって、ひたすら功を急いでいることである。――十万の大軍、何するものぞ。彼より来るこそ、お味方の幸いである。いま一挙に、それを討たないで、和議など求めて行ったら、いよいよ彼らの驕慢をつのらせ、悔いを百年にのこすであろう」
青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。