セリフ詳細

「宿将や、重臣の大部分が、云い合わせたように、わが君へ降参をおすすめする理由(わけ)は、みな自己の保身と安穏をさきに考えて、君のお立場も国恥(こくち)も大事と考えていないからです。――彼らとしては、主君をかえて、曹操に降参しても、すくなくも位階は従事官を下らず、牛車に乗り、吏卒をしたがえ、悠々、士林に交遊して、無事に累進を得れば、州郡の太守となる栄達も約束されているわけです。それに反して、わが君の場合は、よく行っても、車一乗、馬数匹、従者の二十人も許されれば、降将の待遇としては関の山でしょう。下手をすれば、密かに始末される可能性もあります。わが君を始末したところで、呉が無くなれば、曹操に逆らうことのできるような勢力は、もはやありませんからね。仮にうまく生き延びたところで、南面して天下の覇業を行わんなどという望みは、もう死ぬまで持つことはできませんでしょう」

作品タイトル:三国志

エピソード名:第94話、呉、紛糾

作者名:畑山  hatakeyama

126|歴史|完結|156話|1,238,935文字

三国志

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青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。