セリフ詳細
「北兵中国の兵は、みな水に馴れず、いま大江に船を浮かべ、久しく土を踏まず、風浪雨荒 のたびごとに、気を労 い身を疲らす。ために食すすまず、血環 ること遅 、凝 って病となる。――これを治すには、兵をことごとく上げて土になずますに如 くはありませんが、軍船一日も人を欠くべからずです。ゆえに、一策をほどこし、布陣をあらためるの要ありというものです。まず大小の船をのこらず風浪少なき湾口のうちに集結させ、船体の巨 きさに準じて、これを縦横に組み、大艦三十列、中船五十列、小船はその便に応じ、船と船との首尾には、鉄の鎖 をもって、固くこれをつなぎ、環をもって連ね、また太綱 をもって扶けなどして、交互に渡り橋を架けわたし、その上を自由に往来なせば、諸船の人々、馬をすら、平地を行くが如く意のままに歩けましょう。しかも大風搏浪 の荒日 でも、諸船の動揺は至って少なく、また軍務は平易に運び、兵気は軽快に働けますから、自然、病に臥すものはなくなりましょう」
青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。