セリフ詳細

「敵の奇変を見ず、ただ形を見れば、そう思うのはむりもない。蜀の劉備ともある者が目に見えるだけの布陣を以て、身を呉の陣前にさらすわけはない。――浅慮(あさはか)に彼の(わな)へ士卒を投じるの愚をなすな。幸いなるかな、ときは今、大夏のこの炎天。われ出でず戦わず、ひたすら陣を守って日を移しておるならば、彼は、曠野の烈日に、日々気力をついやし、水に(かっ)し、ついには陣を引いて山林の陰へ移るであろう。そのときに至れば、かならず陸遜は号令一下、諸将の奮迅をうながすであろう。将軍、これも呉国のためだ。乞う、涼風(すずかぜ)懐中(ふところ)に入れて、敵の盲動と挑戦を、ただ笑って見物して居給え」

作品タイトル:三国志

エピソード名:第155話、夷陵の戦い

作者名:畑山  hatakeyama

126|歴史|完結|156話|1,238,935文字

三国志

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青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。