「さもあらば大事を成すの機今日にあり! です。彼が百万の大軍もみな遠征の疲れ武者、ことには、当陽の合戦に、あせり立つこと甚だしく、一日三百里を疾駆したと聞く。これまさに強弩の末勢。――加うるにその水軍は、北国そだちの水上不熟練の勢が大部分です。ひとたび、その機鋒を拉がんか、もともと、荊州の軍民は、心ならずも彼の暴威に伏している者ばかりですから、たちまち内争紛乱を醸し、北方へ崩れ立つこと、眼に見えるようなものです。この賊を追わば、荊州へ一挙に兵を入れ給うて、劉予州と鼎足のかたちをとり、呉の外郭をかため、民を安んじ、長久の治策を計ること、それはまず後日に譲ってもよいでしょう」