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活動報告

ここだけの話⑫【第八章 うごめく者たち 後編(2)】

八章の締めくくりは、冒頭の逆再生のような場面から。ようやく「うごめく者たち」というタイトルの意味がおわかりいただけると思います。

ここで起きる、いくつかの出来事と距離を置くため、読み手が遠くから見ているような描写としました。
まず、力を入れたのが夕刻の鐘の表現です。文中の「夕刻の鐘は昼の人々に安息を告げるが、闇夜にうごめく者たちにとっては一日の始まりを意味する」ですが、これは筆者の体験が元になっています。

筆者が保育園に通っていた頃です。母のお迎えが早かった日は、家に帰ったらすぐに、やかんやスコップ、ミニカーなどを引っ提げて、五時のチャイムが鳴る公園へ。チャイムの音は自分の時間の始まりだったんです。それを思い出しながら書きました。

最初に出てくるのは、薄暗闇の中なので名前を伏せていますが、もちろんリラです。
つぎが、日暮れなどお構いなしに東門から出立していく痩身の男。歩き方が独特なうえ、どうやら夜目も効くようです。

同じ頃、リラが立ち寄る予定のクイルツッカからもほど近い漁村に、噂の海賊たちが現れます。
大波とともに襲いかかったり弓矢が役に立たなかったり、さらには略奪もせずに引き上げるなど、どうも普通の賊ではないようです。
また、物騒なことに黒塗りの剣を持った男による漁民の惨殺も起きてしまいます。

最後は、夜更けの廃屋でトツカヌ、そしてテルゼンという人物が何やら企てている場面です。
怪しいことこのうえないのはともかく、またおじさんが増えました。
トツカヌが飲んでいる酒はヌルイカと呼ばれ、パクナス魚醤とともにクイルツッカで醸造されているものですが、これらの造語は筆者渾身の作ナノダトカ……。

つづく第九章ではいよいよ、現在のリラの、探索者や魔術師としての本領が発揮されることに。「月夜の廃墟にて 人の縁に感謝する」という、ひねりも何もないタイトルとなっています。

【黒衣のリラ】
https://novel.daysneo.com/works/acdd7db59ac2a45160d4471fbf28457d.html

2022年 04月30日 (土) 23:41|コメント(0)

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