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活動報告

「黒衣のリラ」 ここだけの話⑬ 【第九章 月夜の廃墟にて人の縁に感謝する 前編】

この章を書き始めてすぐの頃、コロナウイルス第一波による自粛生活が始まりました。
仕事と買い物以外は家にこもって、気持ちを穏やかに保たせながら執筆していたため、読み返すと、月明かりの中を探索する場面などに当時の心理が反映されているように思います。
ちょうど休校だった子供たちに協力してもらい、立ち回りを検証した戦闘シーンも、いまとなっては懐かしいです(遠い目)。

さて、リラは悩んだあげく、手がかりを得るために、夜陰に乗じて旧敷地への侵入を果たします。
この廃墟が九章の舞台となります。

警備の土人形が巡回する廃墟や、以前から存在がほのめかされている、苦い記憶が詰まった高屋根の礼拝堂は、のちの章において重要な場所です。
リラは人慣れした廃墟猫を不審に思い、何やら怪しげな魔術を施しますが、これは戦乱の時代、猫を操って暗殺などに用いるため開発が進められたという、いわくつきの呪文。
ようやくファンタジーらしい展開になってきたところに、堅苦しい魔術師ロスローが、本人的には不本意であろう再登場を果たします。
リラにとっては、どこまでも偉そうにするだけの石頭という印象なのが微笑ましいかぎり。

彼女は、未完成な魔法構文に著しく体力を削られるなか、このロスロー猫とのやり取りを試みますが、この際に猫がつぎのようなセリフを残します。
「人間は蛇に噛まれただけで死に至るほどの貧弱さにもかかわらず、野蛮な生物ときている」
じつはこれ、畑仕事のおじさんから聞いた「うちの猫が草むらでマムシに噛まれたけれどピンピンしとるわ」という話がもとになっています。

猫はマムシの毒もなんのそのというくらい、天性の蛇ハンターらしいのです。
それにしても猫ってつくづく、生き物として完成されているなあ……と感心。
でも、ネギを食べただけで死んじゃうのですが。

この話のように、人から聞いた話が、ときとして実体験に勝るほど想像をかき立ててくれることがあって、創作するうえでのモチベーションになっています。
また、猫のくだりは、小説を書き始めた2016年に先行して書いていた分ということもあって、4年をかけてようやくたどり着けたか、と感慨深いものがありました。

ここだけの話⑭につづく

【黒衣のリラ】
https://novel.daysneo.com/works/acdd7db59ac2a45160d4471fbf28457d.html

2024年 01月29日 (月) 21:55|コメント(0)

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