冬晴れのラララ

[恋愛論・結婚]

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(本作品は、2020 ことのは文庫 ライト文芸賞一次選考通過作を再構成した作品です。)

 一月中旬。錦糸町の、Marimuraの社員用マンションから、同居人矢部ヤスオがタエの家電を盗んで逃げた。新宿のアパレルメーカーMarimuraに勤務するデザイナー木村タエは総務に勤務する、隣室の義姉大沢ケイの部屋に泊めてもらうことになった。
 十二月中旬に、チーフデザイナーがレディース部の企画データーのコピーを紛失し、社内に企画データ流出防止の箝口令がしかれていた。

 一月下旬。夏物企画が半月遅れで完成した。その日から大雪になり会社は五日間休業した。チーフデザイナーと企画室長が社員用マンションを退居したため、タエとケイは2LDKへ引っ越しルームシェアした。

 休業あけの人事異動で矢部ヤスオに似た本田ヤスオがレディース部長になった。
 タエとケイはチーフデザイナーと総務チーフに昇進し、本田部長から管理職の通信記録調査を指示された。
 調査の結果、社長鞠村まりえは前チーフデザイナーと前企画室長に指示し、自社のデザイン企画を転売していた。データのコピー履歴の発見者は中林なつみ。彼女を含めタエの部下は株主たちの調査員だった。株主たちは社長に、前チーフデザイナーと前企画室長を解雇させていた。

 二月初旬。タエは矢部ヤスオを同行した本田部長を見つけ空手を使い二人を捕まえた。
 鞠村まりえをはじめ業界大手の経営者はカルテルを組み、テキスタイル協会と色彩協会を利用して毎年の流行素材と流行色を操っていた。
 本田部長と矢部ヤスオは異母兄弟で公正取引委員会の調査員だった。大株主の中林宗佑は中林なつみの親で、二人の大叔父だった。

 二月下旬。大雪で会社は休業した。
 株主の告発により鞠村まりえが横領と背任、独占禁止法違反で逮捕され、新社長本田孝夫(矢部ヤスオ)と事業部長本田康夫(本田ヤスオ)が二つの協会の理事の逮捕監禁容疑で逮捕された。株主たちは鞠村まりえを退陣させたが大株主中林宗佑のMarimura乗っ取りは失敗した。

 株主たちは異例の決断を下し、事件解決に尽力したタエとケイに社長就任を要請した。二人は社長就任に破格の条件を付けた。

 雪がやみ公共交通機関が復旧した。人事異動説明会を前に、九階大ホールから見える雪景色の都内は朝日を反射して眩しい。
 株主代表の近藤政夫は、まさにMarimuraの未来を象徴する冬晴れの絶景だと言ってタエとケイに社長を一任した。

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