第4話 天使のお城
文字数 1,435文字
安全なフットパースは、そこから外れなければ何のリスクも負わずに行けた。
でもあのスリリングなロッククライミングは、ここまでの道のりを楽しい物にしてくれたかもしれない。いろいろなことは置いておいて、忘れられない思い出にしてくれたことは確かだ。
眼下に望む海は、私が崖の上に立っていることを教えてくれた。
崖の下に砂浜はなくなっていたし、あれからもまだ地味に登りになっていたフットパースはけっこうな高さになっていて、出っ張った岩壁は素人では登れない感じになっていた。
ここからなら登れなかった。というよりも、そもそも歩いてたどり着けなかっただろう。
ちょうど登ってすぐの場所にあったお茶もスコーンも美味しかったし。
とにかく、見晴らしもよく、素晴らしい景色が広がっていた。
それでも、そういう逸話があると、地味な建物も特別に見えなくもない。
それよりも……
冬の柔らかい陽の光。
その光が、私の観ている景色のすべてを照らしていた。
もやもやふわふわした真珠色の空気が満ちている。
私はその中に立っていて、その世界に包まれていた。
太陽を頭部に、光と雲で白いローブを身にまとった羽の生えた天使に見えた。
でも、これを建てた人がいたから、私はここに来た。
見たこともない、お金持ちのおじさん。
でも、お金がなくても、どうしても建てたいと思ったおじさんが、お金持ちのおじさんを巻き込んで作ったのかもしれない……
柔らかな光と空気が、心地よかった。
陽が沈んでも、しばらくそこにいた。
私はこういうたまたまに逢いたくなることがある。
だから旅行をするのかもしれない。
気の向くままに、ふらふらと。
そんな気がしている