第24話 「乾杯しよう、美が花開く」
文字数 2,103文字
真面目で大人しいアルフレード。
こんな華やかな場で、乾杯の音頭を取るような柄ではありません。
とはいえ憧れのヴィオレッタの前ですから、アルフレードは覚悟を決めます。
こうなったら、少しでもこの場を盛り上げよう!
彼は、魂を込めて歌い出すのです。
きっぱりと、しかし流れるようなワルツのリズムに乗って、声を響かせるアルフレード。
その見事さに、ヴィオレッタも他の人々も息を呑みます。
アルフレードは、ヴィオレッタが自分にとって女神に等しいと言っているのです。
本人は遠回しのつもりでも、ヴィオレッタは苦笑もの。
だけどアルフレードの歌には、なかなかの力があります。
雰囲気に呑まれたように、人々の合唱が入ります。
ヴィオレッタにとっては、愛の駆け引きなんて手慣れたもの。
アルフレードに秋波を送られたようではありますが、彼だけに注目するような野暮な態度は取りません。
他の人々を置き去りにしないよう配慮しつつ、盛り上がった雰囲気に呼応するのです。
人々はヴィオレッタの歌に、さらに盛り上がります。
ここへ来るのは、刹那の快楽を求める人ばかりなのですから。
享楽的な雰囲気になりましたが、ここで引き下がるアルフレードではありません。
歌の後半で、彼はヴィオレッタと言葉の掛け合いをします。
快楽が一番と歌うヴィオレッタと、人はみな真実の愛を求めるべきだというアルフレード。どちらが勝つのでしょうか?
アルフレードはすでに告白に近いことをしています。
でもヴィオレッタにとって、この歌はあくまで余興の一つ。ここは恋愛ごっこをする場なので、本気で受け止める気はありません。
だけれども、パーティーを上手に盛り上げてくれたアルフレードには、かなりの好感を持つのです。
大人気の曲、「乾杯の歌」に関しては、さまざまな動画が公開されています。ぜひお好みのものを見つけてみて下さい(Brindisi、またはLibiamoで検索!)。
こちらは落ち着いたナイトクラブ?風な演出。
貫禄さえ感じさせる「ママさん」ヴィオレッタと、初々しいアルフレードとの対比が良いです。
イギリスの王立オペラハウス(コヴェントガーデン)での公演です。
打って変わって、こちらは「極彩色」でファンタジックな演出。すべてはヴィオレッタの夢の中の出来事、という設定のようです。
メトロポリタン歌劇場です。アメリカでは、とにかく大規模で豪華な舞台が好まれるとか。
隣の部屋から、音楽が流れてきます。
人々を促しておきながら、自分は苦し気に座り込んでしまうヴィオレッタ。
人々を隣の部屋へ追いやり、ヴィオレッタは苦しそうに呼吸をします。
心配のあまり、その場から動けずにいるアルフレード。
一方ヴィオレッタは、自分だけがその場に残っていると思い込んでいます。
鏡を覗き込み、自分の顔を両手で覆うヴィオレッタ。
お酒の力を借りて、病気のことを忘れようとしているヴィオレッタ。
だけど死の陰は、確実に近づいてきているのです。
ここでヴィオレッタは、部屋の中にアルフレードが残っていることに気づきます。