第30話 本当にあった怖いかもしれない話

文字数 1,207文字


さて、ラストは私の経験で恐縮ですが、実話怪談風にしめたいと思います。あまり怖いことは起こりませんが、小野不由美さんの「残穢」をイメージして読んでいただければ。

私の長男が小学生だったときの話です。
とある地方の、田舎の小学校に通っていました。
周囲は寺と墓石ばかりの、いわゆる寺町と言われるところのど真ん中にありました。
息子はバスケ部だったので、放課後は週4回くらい、体育館で練習があります。
その体育館が、とにかくトラブル続きなのです。
突発的なものだとカラスや猫が死んでたり、断続的なものだと近所のクレーマーが「うるさい」とクレームを入れてきたり。
閉めたはずの窓が開いていたことも何度かありました。
子供のケガや喧嘩も多く、骨折した子や鼓膜が破れた子もいました。
また、子供のレギュラー争いが親に飛び火して、保護者もいつも険悪な雰囲気。
体育館の倉庫はなぜかいつもゴミだらけで、モップやぞうきんも汚く、掃除機はすぐ壊れてしまいます。
バスケ部だけじゃなく、同じ体育館を使うバレー部や剣道部も話を聞くと同じ様子でした。
とにかく子供のケガと喧嘩、親同士のいざこざが絶えないのです。
そんなわけですから、私を含め、保護者の多くは自然と体育館から足が遠のきました。
当番のとき以外は、駐車場で子供を待つようになりました。
部活そのものも、人数が少なく、子供の数の減少とともなって、衰退していっている印象でした。

ところが、逆に何人かの保護者は、仕事や家事を放り出してまで、体育館に居座るようになったのです。
お母さんたち4人が、夕方の4時から練習が終わる7時まで、毎回ずっといる。
子供の練習につきそうというわけでもなく、体育館の玄関脇にあるフリースペースに、パイプ椅子を並べて、4人でずっとおしゃべりしている。とにかくずーっと体育館にいます。ほかの保護者の間で「あの人たちいつもいるね」と話題になるほどでした。
体育館がちょうどいい井戸端会議の場所だったといえばそれまでなんでしょうが……それにしても、体育館にいすぎじゃないか? まるで体育館が棲家のよう。最後の方は気味が悪くなってきました。

さて、ここからが怖い話です。
小学校卒業後。
例の4人のお母さんがどうなったかというと……。
2人のお子さんが中学で不登校。
お母さんの1人が重い病気で入院、その後は卒業まで消息を聞きません。
もうひとりのお母さんは、精神的に不安定というか、突然激怒したり学校に怒鳴りこんだり、子供を殴ったり。モンスターペアレントとして有名になりました。

たまたま仲良くなった4人が、なにかしら問題を抱えていたということかもしれません。または問題があったからこそ仲良くなり、それが中学校で表面化したということかもしれません。
ただ、現場にいて逐一見ていた者としては、こう思うのです。
「やっぱりあの体育館はおかしい」



これでプチホラーはおしまいです。
読んでいただき、ありがとうございました。








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