GF(グレートファーザー):4

文字数 1,448文字

 「まず、我々がすべきことは、住民を増やすことではなく、国民が増えていく状況を作ることです。これまでの間違いはここでした。数合わせで人を集めたところで、優秀なチームは作れないのです。国家が、正しい国家として継続していくには、国民が豊かに、正しく、賢く暮らし、その思いを理解した自国民を自然に増やしていかなくてはならないのです。それこそが国家にとっての未来なんだ!現在に生きる我々は、過去に縛られることなく、未来を描いていかなくてはならない。未来こそが全てなんだ!では、未来とはなんでしょうか?未来とは国の子供達です。しかし、今、出生率は下がっています。ピークでは毎年二百万人の子供たち、未来が生まれてきていたのに、その数は落ちています。が、まだ、毎年八十万人の子供たちが生まれています。まだ、未来は潰えてない!だが、その未来は増やさないといけない。それは我々が培ってきたものを無くさないための大事なことです。人口が減り、日本が消えてしまえば、祖先や我々がしてきたことが、無かったことになってしまう!そうするべきではないのです。だからこそ、生まれくる子供たちを大事にしなくてはならない。だが、社会の闇がせっかく生まれた未来を殺している。年間八十万の命が生まれる一方で年間、十二万の命が生まれる前に殺されている。堕胎手術です。どうしても育てることができないからといって、大事な未来を現在に生きる私たちが、その命、その価値を潰しても、殺しても良いのでしょうか!良いわけがない!民族が滅びようとしている時に、その民族の種を潰していく。そんなことが許されるわけがない!堕胎は殺人であり、殺人はしてはいけないことだ。だから堕胎を禁止する。殺人を国家として取り締まっているから当然だ!じゃあ、生まれた子供たちはどうする?国家が面倒みます。国家の子として大事に育てていきます。だけど、堕胎すると言うことは、それなりにのっぴきならない理由があります。望まない妊娠だと思いますが、我々は国家にとって宝である、未来そのものでもある大事な子供を提供してもらうのですから、小さな命を救ったお礼と生活の再建のために、子供一人につき、一千万円を母親に支払います。また、現状、子育てが出来ずに貧困に困っている人々も対象とします。育児ができない生後半年以上、十五歳未満のお子さんを国家に預けてください。しっかりと育てます。ご提供していただいたからには一人当たり五百万円ほど国家が支払います。我々は未来である国家の子を集めて、しっかりと育て、日本を人口が増える、豊かで、正しく、強い国家に変えていきます。未来が広がる日本に変えていきます!」
 若草の国民に対する演説が行われた。国家が育てられない子供を引きとる。しかも一千万円で!堕胎を禁止し、育児放棄された子供たちを守り、大人になるまで国家が責任を持って育てていく「国家の子法案」が可決され、施行された。全国の産婦人科では、あのつらい堕胎を断ることができて、胸を撫でおろす医院も多かったが、堕胎専門の産婦人科は廃業を余儀なくされた。今後、堕胎は殺人罪となる。これに対して「したくない妊娠なので、消したい人もいる」という異論を唱える者もいたが、「じゃあ、罪のない新しい命、未来である子供を親の都合で殺して良いのか?」という議論にすげ替えられると反論が出来るものはいなかった。お腹の子は意志がないから、人間でないという理論は、どう考えたって人権優先の現代においては、時代遅れも甚だしい。
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