GF(グレートファーザー):2

文字数 1,184文字

 疲弊した自国党はイメージアップのために若草をすぐに少子化対策大臣にした。二枚目が子供を増やそうと言えば、世の女たちがそれに靡くし、反論しないだろうという自国党の古い価値観の老議員たちの考えであった。若草はそれをあからさまに幹事長に言われたがハハハと軽く笑い、快く受け入れた。
 「それに、若草くん、きみ、子供いないだろ?奥さんも綺麗な女優さんなのにね。」
 こんな必要のない幹事長の追言にも若草は嫌な顔一つしなかった。この様子はテレビで流された。とんでもない失言となり、幹事長は窮地に追い込まれたが
 「私が政治家を志したのも、これからの子供たちの為ですから。私自身に子供は確かにいませんが、日本中の子供達を自分の子供だと思って、少子化の問題に挑みます。幹事長も悪気があるわけではないでしょうから、私はあまり気にしていませんよ。」
 若草の発言に対して、国民は若草に対する評価を上げていった。それに対して、世襲の議員だらけの自国党議員は相対的に評価を下げていき、生き残りたい議員たちは若草の側に回った。

 世論が次に相応しい総理のアンケートで「若草福太郎」を推しだした。マスコミ各社は空沢寿明と一緒に仕事をした仲だ。誰も彼を悪く言う人はいなかった。なので、贔屓したような内容のニュース、記事が溢れた。同時にメガネをかけた真面目だけが取り柄の現総理叩きが一斉に始まる。「何も見えてない無駄メガネ」「息子が馬鹿」「嫁が常識知らず」何もしてないのに、イメージからの悪評だけがバラ撒かれる。よっぽどの強い精神がなければ耐えられない批判、批評、人間否定。半年経たずにメガネ首相は強いストレスの為、脳梗塞で死んだ。死んでも嫌われないようにメガネ首相は「若草大臣に総理をお願いしたい」と遺書を残した。しかし、「生きているうちに代わればよかったのに!」「おせーんだよバカ!」と踏んだり蹴ったりの結果しか残らなかった。自国党は選挙も近いので、若草の人気に肖ろうと、さっさと若草を総理大臣にした。絵になる男、若草の支持率はすぐに上がっていった。

「ようやく総理になれたわね。」
「早かったと思うけど。」
「そうね、ねえ、それより、私ってファーストレディー?」
「そうさ、君は総理夫人、国家の母さ。」
「あなたは国家の父ね。そうなると、国家の子が必要ね。」
「計画は万全だよ。コッカノコッカノコッカノコ!」
「ふふふふ、コッカノコッカノコッカノコ!」
若草夫婦が総理官邸で、カニのような横歩きの振り付けで踊り、ふざけた掛け声を言い合って笑い合う。二人とも還暦を過ぎていたが、福太郎はハンサムを維持しており、妻の山内智子も美しさは品よく保たれており、その雰囲気たるや、どこの夫婦より若々しく、未来への希望に満ちていた。本当は、よく見るとシワや白髪はあるのだが、そんなことは気にならないほどの溌剌とした気を纏っている。
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