第4話 FACTFULNESSぽい会計の本『決算早期化の実務マニュアル』

文字数 1,560文字

「へー、こんな本があるんだ」の第4回です。

今回紹介するのは『「経理の仕組み」で実現する決算早期化の実務マニュアル〈第3版〉』です。

業界が偏っていて申し訳ないです。これは大半の人が興味ないかもしれませんね。
興味なければ、読み飛ばしてください。

『FACTFULNESS』は有名すぎるので、それっぽい本のことを書こうとしたら……たまたま机の上にこの本が置いてありました。

『FACTFULNESS』は「思い込んでいるだけで本当はそうじゃない」ということを説明している良書です。著者は医師です。

ブラックジャックやドクターXのように、天才的な腕前で手術を成功させることはカッコイイですね。
でも、よく考えて下さい。
ガンを予防できれば手術は必要ありません。

医師として1人の命を救うことは重要です。
でも、ガン予防、感染症予防ができれば10万人、100万人救えます。
医師としてどちらが重要でしょうか?
100万人救う方が重要なはずなのに、医師をしていると気付けないそうです。

このような思い込みは、どの業界にもありますよね。

実務では「〇〇をしないといけない」と何となく担当者が思い込んでいることがあります。これは会計分野でも同じです。

『決算早期化の実務マニュアル』は会計分野の思い込みを補正するために書かれています。今月発売なので机の上に置いてありました。

どこかで書いたかような気がしますが……私は公認会計士の資格を持っています。
この本の著者の武田さんは私の友人で、25年くらいの付き合いです。
それなりに有名なので経理関係の人は武田さんの本を1度か2度は読んだことあるかもしれません。

さて、この本がFACTFULNESSぽいのは会社の経理担当者が思い込んでいるだけで、実際には不要なことについて書かれていることです。
つまり、会計士から見ると、会社が過剰な対応をしているケースが多いです。

私も、正直、そんなことしなくてもいいのに……と思うことがありました。
本書に取り上げられていた思い込み事例をいくつか紹介しましょう。


・1円単位で親子会社間の差異分析・調整をする

少し専門的な話をすると、上場会社は連結財務諸表を作成して開示します。
この連結財務諸表を作成する場合、グループとしての業績を開示するため、グループ内の取引(親会社と子会社の取引)は相殺消去します。

親会社から子会社に1億円の売上がある場合を例にしましょう。
この場合、親会社に1億円の売上が計上されており、子会社に1億円の仕入が計上されているはずです。
「はず」と書いたのは、実際にはズレるからです。

日本の親会社、米国の子会社の場合はイメージしやすいと思います。
収益認識のタイミングが違う、為替換算に使用するレートが違います。だから、親子会社間の取引は金額がズレていて当然なのです。

真面目な経理担当者はズレが気になるため、頑張って合わせようとします。
でも、そんなことしても時間の無駄ですよね。
止めた方がいいです。


・無理して連結決算システムを使う

連結財務諸表を作成する場合、連結決算システムを使う会社が多いです。パッケージの数値を入れれば自動的に連結財務諸表を作ってくれるからです。

でも、連結決算システムは使いこなすのがもの凄く大変です。
正直言うと、会社数が少ない場合(例えば10社以下)、エクセルで計算した方が早いです。

特に、日本の会社は資本関係が複雑なので連結決算システムで資本連結するのは大変です。システムでは計算できなかったりするんですね。
時間の無駄なので、私は「それ、エクセルでよくね?」と思っています。

思い込みがあるのはどの業界も同じです。
会計分野の思い込みが補正できる良書だと思います。

本書の対象分野は会計なので、大半の人には関係ないでしょう。
ご興味ある人は読んでみてください。
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