二十二 未来のあるべき世界㈠

文字数 2,033文字

『【未来のあるべき世界】を以下に記す。

【未来のあるべき世界】
 市場経済と金融資本主義を、国際的に根本から見なおす。地球温暖化防止会議を先導した先進諸国は発展途上諸国から大批判され、先進国を主軸にしない新たな協力体制が強まり、大陸ごとに国家を統合し国家連邦を創る。

 各国家連邦を統括する政府として、国家連邦統合議会、通称、国連議会に基づく、国家連邦統合議会対策評議会、通称、国連内閣を頂点に、国家連邦統合政府、通称、国連政府を誕生させる。

【統合政府と国家連邦】
国家連邦統合政府、通称、国連政府
国家連邦統合議会対策評議会、通称、国連内閣
国家連邦統合議会、通称、国連議会

 アジア国家連邦
 オセアニア国家連邦
 北コロンビア国家連邦
 南コロンビア国家連邦
 ユーロ国家連邦
 アフリカ国家連邦


【新法律の制定】
「市場経済禁止法、金融資本主義禁止法」
 を基本とした新たな法律、
「証券取引法」
「労働法」
「環境保護法」
「製造基本法」
 を制定する。

【市場経済の廃止】
 国連政府の下で施行された「証券取引法」と「労働法」により、経済を狂わせる市場経済の元凶を無くすため、
 投機を目的とする株式売買の禁止、
 投機を目的とする企業売買のための株式売買の禁止、
 支配的または強制的な企業買収を目的とする株式売買の禁止、 
 企業や国家への投機を目的とする投資の禁止、
 企業や国家への投機を目的とする金融商品の開発と販売の禁止、
 派遣と称して雇用関係を物のレンタルの如く扱う、労働者の非正規雇用の禁止、
 労働者の派遣や紹介によって利益を得る事の禁止、
 等を施行する。

 効果
 株式配当のみを得る資本家を残し、投機家を消滅する。


【産業構造の変革】
「環境保護法」と「製造基本法」により、人類を育成する素地を、十八世紀後半から十九世紀にかけて起こった産業革命以前の地球環境に戻すため、
 地球環境を悪化させる物質(放射性物質も含む)、の廃棄の厳禁、
 地球環境を汚染する物質の生産の厳禁、
 を制定する。

 守れぬ個人と企業と国家に、国連政府が厳罰処分を下す。
 企業に無廃棄物生産を強制する。
 核物質の使用を厳禁する。
 短期間で分解して自然へ戻らぬ製品は生産を厳禁する。
 自然分解不可能な物を生産する場合、企業は国連政府の監視下で、未来永劫にわたって全製品を再利用するよう強制する。

 二十世紀の人々は欲望のままに望む物を生産し、得たい物を手にいれ、不要と判断した時に廃棄した。彼らから見れば、ここに書いた二十一世紀は途方もなく制約だらけで経済的欲求の暗黒時代と言える。
 しかし、二十一世紀半ばには、産業は生産過程で廃棄物を産出せず、製品その物は自然分解可能か再利用可能な物になり、資源は再利用されるようになる。

 だが、どのように法律を整備しても、例外を認めるのが人間だ。社会の裏でうごめく者が現れ、財界にも新たな経済理念を求める者たちか、国連政府の認める完璧な製品を見つけて、それらを創ろうとするだろう・・・』


『完璧な製品は臓器だね』
 マリオンの声が省吾の意識に響き、右肩が熱くなった。芳しい香りがする。
「ただいまっ!」
 理恵が椅子に座っている省吾を抱きしめて頬ずりした。省吾の顔を見て微笑み、唇に唇を触れている。
「えっ?」
 省吾は理恵の顔を見ながら、タブレットパソコンのディスプレイの隅を見た。
 十八時過ぎだ。どうしてこんな時間なんだ?俺は何してた?

「帰って洗面所から声かけたけど、返事がなかったから見にきたの」
 理恵は省吾に頬ずりしながらタブレットパソコンを見ている。
「ああ、考えこんでた・・・。夕飯を作るよ」
 理恵といっしょに朝飯を食べて、理恵が出かけた後に片づけて、二時間くらい日記を書いてたはずだ・・・。

「どうしたの?」
 考える省吾を理恵が驚いたように見ている。
「理恵が出かけた後、ずっと考えて書いてた」
「昼ごはん、食べなかったの?」
 昼食を食べた記憶が無い。食べずに書いていたなら文章が少な過ぎる・・・。
 正午前から六時間ほど記憶が無い・・・。
「食べるの忘れたらしい・・・」

「すぐ何か用意する!夕食は私がが作るね!」
 理恵は省吾の頭を抱きしめて、タブレットパソコンを見た。
 省吾は頭に理恵の熱さを感じた。マリオン、俺は何してた?
『私とともに未来にいたぞ』
 なんだって?どうやって未来へ行った?
『精神空間思考した。思考がパソコンの素粒子信号でスキップ、つまり時空間転移した』

「未来のあるべき世界か・・・。
 この法律、すぐに使えるね。いろんな廃棄物を規制できるよ・・・。
 今の体制だと核廃棄物のような物に国際的な法律を適用できないんだね・・・。
 着がえてくるね。サンドイッチ作る。夕食まで食べててね」
 理恵はまた省吾を抱きしめた。
「これを保存したら二人で夕飯を作ろう。サンドイッチを食べながら・・・」
「うん、いっしょに作ろうね!」
 理恵は省吾に頬ずりして省吾を抱きしめ、着換えのために寝室へ行った。
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