空を飛んでしまった少年
文字数 1,256文字
蝙蝠の羽根を出して、全速でここまで飛んで来たんだぞ。
今度は、間に合わなかったら、蘇生術どころじゃなさそうだからね。
校舎の屋上からダイブした少年は、ふわふわと宙を浮いている。
重力制御能力を使って、無重力にしたからね。
問題なのは、彼以外の生徒達もみな、宙に浮いているってことだ。
そんなピンポイントで使える能力じゃないんだって。
目当ての少年は、空に浮かびながら、慌てふためいている。
今の今まで死ぬ気だったくせに。
死にそうになるより、慌てることなんてあるのかい?
とりあえず、とっとと彼を回収しないとね。
空中で逆さまになっている少年に、僕は挨拶した。
少年は、目を見開いて、驚いている。
さすがに、一度、魂が肉体から離脱した人間を、蘇生させることは僕にも無理だ。
魂が無いゾンビとしてなら、蘇らせることも出来るんだけどね。
まぁ、悪魔だし。
周囲には、学校の生徒達が何人も、やはり同じように宙を浮いている。
悲鳴や叫び声が飛び交っていて、まぁ、軽い地獄絵図、ライトなヘルだ。
自分がしでかしたのに、他人のせいにするのは悪魔の定石。
悪魔にはよくあることだ。
驚いている少年の手を取り、僕は空高くへと飛び上がる。
蝙蝠の羽根を、左右に大きく羽ばたかせて。
ついでだから、この恐怖もいただいておこうか。