勘違いしてしまった女
文字数 1,300文字
リサは本当に、ほとんど毎日のように絶望していた。
その度に、僕は部屋にお邪魔して、彼女の絶望をご馳走になる。
リサは、僕が現れるといつも、泣きじゃくりながら、愚痴をこぼす。
彼氏に殴られて、鼻の骨が折れたとか、
彼氏の借金返済の為に、無理矢理風俗で働かされて、好きでもない男に抱かれるのが辛いとか、
自分は体を売ってまで彼氏に献身しているのに、
当の本人は他の女と遊びまくっていて、気が狂いそうだとか……。
人間の男と女にはよくあること。
よくある普通の絶望だ。
僕が、何度も何度も、彼女の絶望を喰らいに姿を現すものだから、
今ではもうすっかり、予定調和みたいになってしまっている。
本当は、こういうお約束をぶち破ってこその、カオスな悪魔なんだけどね……
こういう、適齢期の女が生み出す絶望は、あと引きで、ついつい癖になってしまうものさ。
心ゆくまで、何度でも堪能したい、そんな気にもなってしまう。
さっきまで、泣きながら、愚痴をこぼしていたリサが、今はもう晴れ晴れとした顔をしている。
それは、僕が、絶望をはじめとする、君のネガティブな感情を、
すべて喰らい尽くしているからなんだけどね。
僕が君の絶望を喰らい尽くす頃には、
君にはもう、ポジティブな感情しか、残っていないんだよ……。
そんな関係をしばらく続けていたら、
ある日、リサがとんでもないことを言い出した。
ちょっとポジティブになり過ぎたのか、
やはりリサには男を見る目が無かった、ということなのか……。
僕は、君の絶望を喰らいに来ている訳だから、
僕が現れる時、君はいつも絶望しているだろうね。
リサは彼氏に振り回されて、いつも絶望していた訳だから、
その彼氏と別れてしまったら、もう絶望しないということになるのかな?
そして、彼女が僕と一緒に居たら、幸福になれると言うのなら、
それは彼女がもう絶望しないということになる。
リサが絶望している。
まぁ、とりあえずいつものように、絶望をいただいておきますか……
……あぁ、美味、美味
リサは、僕に振られたから絶望したのか。