あとがき

文字数 763文字

 無月の水を読んでいただき、ありがとうございます。
 わたしの作品は、従来的ではない、あたらしいトリックミステリーをつくることを主としています。だからこそ、需要のない傾向にあるのですが……。
 これは自虐です。

 もうちょっとジュブナイル、社会派、エンタメ、学園にフューチャーした作品を書いておけば……という後悔はあります。
 そうすれば、公募もできたのかな……。
 オールジャンル類別表とか叙述曲とか三位十塔とか、つくってしまうから、どこにも居場所がないのです。……生まれる時代をまちがえた。

 この無月の水を含めた花鳥風月シリーズは、江戸時代を舞台としたトリックミステリーとなっています。捕物帖と呼ばれるジャンルです。市場には、まずないテーマです。

 無月の水のメイントリックは、凶器トリックになっています。比較的、王道の使い方をしています。主的な伏線も一章に登場させているので、花鳥風月シリーズの一作目としては、ちょうどいいかなと思いました。

 末尾にある類別プロット表には、すべての伏線、トリック、動機、レトリック、サスペンスなどを記入してあります。

 ごらんのとおり、300以上、導入しており、一定のクオリティは、保証できるようにはしています。のこりの3作、山風の杭、仁鳥の餌、飛花の命もトリックミステリーとしては、まったく質が低いというものにはならないようにしているつもりです。

 少なくとも、作者がほんとうに、馬鹿なくらい作家努力をしてしまう人だということは伝わるかと思います。不器用な作品群ですが、こんごもお付き合いしていただけたら、うれしいです。

 つぎは、2024年6月、8月、10月ほどの1ヶ月間、投稿になる予定です。
 これからは、パラグラフリーディングと六点リーダーなどをひとつにまとめるつもりです。

 よろしくお願いします。
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登場人物紹介


未堂棟青人……関東取締出役の役人であり、このシリーズの解き手である。八州廻りとも特別同心とも呼ばれている。徳川幕府から警察的な権限を与えられており、殺人事件の捜査、下手人の逮捕を関東全域で行っている。未堂棟家は武士階級のなかでも、とくに地位が高く、ほんらいは関東取締出役のような仕事をする必要はないのだが、本人のたっての希望により、この仕事に就いている。未堂棟家の計らいもあり、武家身分に対しても、厳しい捜査を可能としている。未堂棟は幼いころに、頭を強く打っており、体調は万全ではない。作中では左目の開閉が進むにつれて、全盛期の姿をとりもどしていく。覚醒前に伏線を集め、覚醒後に回収する。珍しい探偵構成を有した解き手である。




別府卯吉……未堂棟と同じく、関東取締出役に就いている。解き手の未堂棟に対して、別府は助手役である。別府の父親は未堂棟家に仕えており、ふたりは対等な友人として育った。未堂棟が頭を打ったとき、別府はすぐにそばにおり、大怪我の責任を感じている。そのせいか、覚醒前の未堂棟に対して、過保護となっている。八州廻りの仕事は、未堂棟のリハビリも兼ねている。そのいっぽうで、危険な目に合わせたくないと思っている。未堂棟に負担がかからないように、積極的に解決へと取り組む。意識的に、強い口調を選んでいるが、ときに、ほんらいの優しさがあらわれる。




瑞木新七……蛇崩町を中心に水屋の商売を行っている。代々の水屋である。御家人や旗本とも商売をしている。葉月に水だけではなく、氷をも売ることで、高い収入をえている。大村家にも飲み水を売っていた。作間藤三郎の甥にあたる。蛇崩町に強い愛着をもっている。



炊馬経子……作間藤三郎の遠縁だが、藤三郎のあとに、水番人の仕事に就きたいがために、彼と親しくしていた。しかし、大村昌村に藤三郎を殺害され、彼女の計画はご破算となる。経子の生活は、一層、困窮していた。現在は大村家の女中となっている。




作間政信……作間藤三郎の義理の弟にあたる。蛇崩町の周囲にある田園は、政信の手によるものである。藤三郎を殺害されたあと、大村家に殴りこみ、斬りつけられたことがある。身体が不自由となっていた。義兄を喪った精神的衝撃はおおきく、さいきんは、賭博に溺れている。




上野左衛門……作間藤三郎の従兄弟であり、蛇崩町にある万屋の主人である。日本産の物品だけではなく、どこからか仕入れた大陸産の物品も置いてある。大村昌村が夜中、上野とたびたび、密会しているところを目撃されている。大村家のほうは上野と親しくしていることを隠したがっている。



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