無月の水 類別プロット表(手掛かり索引+)

文字数 7,063文字

※以下には、本編にて用いたトリック、動機、伏線回収、一章必殺、ドラマ、アクション、落ち生まれ結び、レトリックなど、プロットの全工程を記載している。なお、類別プロット表および手掛かり索引+は、昔からあるミステリー手法のひとつである。100年ちかくまえの試みを、不束三探が独自改良したものである。
考えてつくるロジカルミステリーの特徴を現出させている。

一章「水騒動の殺人」

後の先:疑問
連用序文:地の文
間四件の一:観察文
サスペンスリーダビリティ1形:早め非日常の見聞
リーダビリティレトリック1型:反復法
リーダビリティレトリック2型:複数反復の一
主体伏線:トリック8計(別府たちは蛇崩町に到着したあと、日食を目撃している)
主体伏線:トリック5計(住民全員が日食を観察している。のちの類推解釈になる)
準伏線(桶のなかは水でみちている。底までは見えない)
主体伏線:トリック6計(意識的に旧暦を強調している。新暦との季節的なずれを示している)
間四件の二:移動文
リーダビリティレトリック3型:列叙法
準伏線(門番も別府と同じように、桶のなかを見ている。服のなかなどに目立ったものはない)
主体伏線:三答制Ⅲ(瑞木は日食中、土倉の外から飲み水を補充している)
間四件の三:状況文
リーダビリティレトリック4型:列叙法
一章必殺2形:解決済みの殺人事件
間四件の四:目的文
リーダビリティレトリック5型:隠喩
先の後:仮説

二章「蛇崩町の変死体」

後の先:新事実
連用序文:地の文
間四件の一:目的文
リーダビリティレトリック6型:列挙法
準伏線(経子は台所で昼食の準備をしている)
間四件の二:観察文
リーダビリティレトリック7型:複数反復の二
主体伏線:トリック3計(佐々木が遠方にある冷えた洞窟について言及している)
間四件の三:移動文
リーダビリティレトリック8型:列叙法
間四件の四:観察文
リーダビリティレトリック9型:列叙法
サスペンスリーダビリティ3形:事件性の高い逸話
先の後:新事実

三章「蛇崩池の来襲」

後の先:新事実
連用序文:会話
主体伏線:リトリック4計(変死体の続出は、次章から被害者となる大村家にかかわっている)
間四件の一:目的文
リーダビリティレトリック10型:直喩
間四件の二:観察文
リーダビリティレトリック11型:列挙法
リーダビリティレトリック12型:直喩
間四件の三:状況文
リーダビリティレトリック13型:反復法
間四件の四:観察文
リーダビリティレトリック14型:漸層法
リーダビリティレトリック15型:隠喩
サスペンスリーダビリティ4形:崩壊劇
示唆急文の一回目――準伏線(日食時の気温低下は死体の腐敗をおくらせる意図があるものの、同時にはやく発見してもらわなくてはならない)
先の後:疑問

四章「下屋敷の惨劇」

後の先:新事実
連用序文:地の文
サスペンスリーダビリティ5形:阿鼻叫喚
間四件の一:状況文
リーダビリティレトリック16型:列叙法
間四件の二:観察文
リーダビリティレトリック17型:列叙法
リーダビリティレトリック18型:列叙法
リーダビリティレトリック19型:列叙法
示唆急文の二回目――準伏線(犯人は木刀という偽の凶器を発見させる狙いがあった。ゆえに、斬殺ではなく、撲殺している)
示唆急文の三回目――主体伏線:トリック2計(佐々木の手のなかに、ほんとうの凶器の手掛かりがのこされている)
主体伏線:三答制Ⅱ(氾濫した泥水ではないという結論にいたったとき、犯人が限定される)
示唆急文の四回目――準伏線(ほんとうの凶器は木刀よりもちかい距離で、手をくだすことになる。羽織りは犯人の用意したもので、返り血の対策になっている)
示唆急文の五回目――準伏線(密室現場への誘導)
間四件の三:移動文
リーダビリティレトリック20型:反復法
サスペンスリーダビリティ6形:突入劇
リーダビリティレトリック21型:漸層法
サスペンスリーダビリティ7形:有事の冒険
リーダビリティレトリック22型:直喩
リーダビリティレトリック23型:隠喩
間四件の四:観察文
サスペンスリーダビリティ8形:異常な死体の目撃
リーダビリティレトリック24型:反復法
サスペンスリーダビリティ9形:連続死体
示唆急文の六回目――準伏線(偽の凶器と真の凶器にかかわる。とくに、大村昌村は刺殺でなければ、実行できない)
主体伏線:トリック2計(未堂棟の回収した綺麗な水は、半日まえ、べつの形状をしていた)
主体伏線:三答制Ⅱ(水をいれた豆皿は、のちの十三章に再登場する。容疑者たちの職業と照らし合わされる)
先の後:疑問

五章「瑞木新七のアリバイ、そして三人目の死体」

後の先:否定
連用序文:会話
間四件の一:状況文
勿論破文
トリック1軽:早業作業
リーダビリティレトリック25型:列叙法
準伏線(書院の屋根は、なぜか開閉できる。太陽光をとりいれられるようになっていた)
間四件の二:観察文
リーダビリティレトリック26型:列挙法
主体伏線:トリック8計(土倉内に瓦版が落ちている。昌村が日食に関心を示していたことの証拠である)
主体伏線:トリック5計(土倉内に望遠鏡をもちこんでいる事実が、天井の窓へとのぼろうとしていたことを示している)
間四件の三:観察文
示唆急文の七回目――準伏線(蛇崩池の破壊は、特異な凶器に関係している)
示唆急文の八回目――準伏線(氾濫中の殺人は、非常に困難)
示唆急文の九回目――準伏線(水の利用を示唆している)
リーダビリティレトリック27型:列叙法
トリック2軽:天候、季節その他の自然現象利用のトリック
トリック3軽:密室トリック
主体伏線:トリック5計(別府の推理は、ほぼ正しいが、同章の瓦版と望遠鏡、いままで目にしていた情報を加えれば、べつの時間軸でも可能だったとわかる)
示唆急文の十回目――準伏線(以前に氾濫のあった事実を指摘する。瑞木が認める。氾濫を想定したトリックに説得力を与えるための言及)
間四件の四:状況文
リーダビリティレトリック28型:列挙法
先の後:新事実

六章「容疑者たちの鉄壁のアリバイ」

後の先:仮説
連用序文:会話
サスペンスリーダビリティ10形:連続殺人
主体伏線:トリック7計(様々な点から死体は損傷している。これは氾濫を利用することで、発見などをおくらせ、ほんらい、殺害した時刻に気がつかせないためでもある)
間四件の一:観察文
リーダビリティレトリック29型:列叙法
間四件の二:状況文
サスペンスリーダビリティ11形:異性間の問題
サスペンスリーダビリティ12形:口論
リーダビリティレトリック30型:直喩
示唆急文の十一回目――準伏線(大村菊太郎の死因は絞殺である)
示唆急文の十二回目――準伏線(佐々木は撲殺、昌村は刺殺されている。この食いちがいは、思っているとおりの連続殺人ではないことを示している)
主体伏線:トリック7計(犯人は氾濫した際、菊太郎のいた家屋が倒壊するように傷をつけている)
示唆急文の十三回目――準伏線(容疑者の限定でもあるが、それ以上に菊太郎の部屋の場所を知ることができた者が犯人という限定でもある)
間四件の三:状況文
リーダビリティレトリック31型:隠喩
間四件の四:目的文
示唆急文の十四回目――準伏線(無月の夜ともうひとつ、無日の昼という発端を示唆している)
示唆急文の十五回目――準伏線(変死体の謎が連続殺人事件の動機におおきくかかわる)
リーダビリティレトリック32型:列挙法
先の後:疑問文

七章「炊馬経子のアリバイ崩し」

後の先:遅れ否定
連用序文:地の文
間四件の一:観察文
リーダビリティレトリック33型:列挙法
間四件の二:状況文
リーダビリティレトリック34型:直喩
リーダビリティレトリック35型:隠喩
勿論破文
トリック4軽:他力作業
示唆急文の十六回目――準伏線(小道の広さは別府の推理に対する否定に繋がる)
示唆急文の十七回目――準伏線(木刀の長さが否定材料となる。濁流を利用した証拠移動はおもしろいが、無月の水では、その上互換を扱っている)
示唆急文の十八回目――主体伏線:トリック1型(樫の木刀は佐々木の私物であり、べつの場所に置いてあった)
サスペンスリーダビリティ13形:異性間の問題
リーダビリティレトリック36型:反復法
リトリック5軽:復讐
間四件の三:状況文
勿論破文
トリック6軽:異様な被害者
示唆急文の十九回目――準伏線(未堂棟は濁流がはいってきた正確な時間帯と時系列の確認を求める)
示唆急文の二十回目――準伏線(氾濫がはじまっていなければ、無月の夜に大村昌村を殺害することはできない)
リーダビリティレトリック37型:列挙法
主体伏線:トリック2型(瑞木は佐々木の殺害された時点で氾濫が起きていなかったと答えた。だったら、佐々木のつかんでいた水はなんだったのか)
主体伏線:トリック1計(佐々木のかよっていた剣術道場も、水不足となっている)
主体伏線:三答制Ⅰ(瑞木も経子も道場のことを知っている。犯人の条件にあてはまる)
間四件の四:移動文
リーダビリティレトリック38型:直喩
先の後:仮説

八章「作間政信のアリバイ崩し」

後の先:否定
連用序文:地の文
間四件の一:観察文
準伏線:三答制Ⅲ(野次馬が日食時の作間政信のアリバイを証言している)
リーダビリティレトリック39型:列叙法
勿論破文
トリック7軽:乗り物のトリック
間四件の二:状況文
リーダビリティレトリック40型:列挙法
間四件の三:状況文
リーダビリティレトリック41型:列挙法
勿論破文
トリック8軽:乗り物のトリック
サスペンスリーダビリティ14形:事件性の高い逸話
主体伏線:リトリック4計(藤三郎は殺されるまえ、上野が変死体の続出と関係していると考え、ひとりで調査していた)
示唆急文の二十一回目――準伏線(上野の万屋は、大陸産の伝来品を扱っていた)
示唆急文の二十二回目――準伏線(未堂棟の指摘した薬は、のちに依存性のある劇物だとわかる)
準伏線(作間は上野の万屋で望遠鏡を目撃していた。別府はまったく同じ望遠鏡を土倉内で発見している。望遠鏡の用途はなんだったのか)
主体伏線:トリック3計(作間から瑞木が氷を売っていたことが証言されている)
リーダビリティレトリック42型:反復法
主体伏線:三答制Ⅱ(葉月の暦に、氷を売るには、洞窟内の令室が必要になる)
主体伏線:トリック5計(作間と別府の会話は、密室殺人のおおきな伏線である)
リーダビリティレトリック43型:複数隠喩の一
リーダビリティレトリック44型:隠喩
間四件の四:状況文
示唆急文の二十三回目――準伏線(上野が書院にいたことは重要である。書院内の秘密を示唆しているからだ)
先の後:新事実

九章「上野左衛門のアリバイ崩し」

後の先:疑問
連用序文:会話
間四件の一:観察文
主体伏線:リトリック4計(書物から麻麦稲類の写しが発見されている。大麻・芥子の生育法を調べている直接的な証拠である)
リーダビリティレトリック45型:列叙法
示唆急文の二十四回目――準伏線(未堂棟は、犯人が蛇崩池を壊した狙いのひとつに、書院の破壊が含まれていたことに気がついた)
間四件の二:状況文
勿論破文
トリック9軽: 犯人が第三者や架空の人物などに化ける
リーダビリティレトリック46型:反復法
示唆急文の二十五回目――準伏線(上野が氾濫を知ったあとの行動に、疑問がのこる)
示唆急文の二十六回目――準伏線(きょうの行動と同じように書院が目的だったという類推解釈)
示唆急文の二十七回目――準伏線(大村家は一部の木樋をとじている。上水の供給を制限していることの証拠である)
示唆急文の二十八回目――主体伏線:リトリック4計(大村家は飲み水まで買っていた。余剰の水はいったいなにに使っていたのか。答えは書院にある)
間四件の三:状況文
リーダビリティレトリック47型:反復法
勿論破文
トリック10軽:開閉可能な遮蔽物の利用
示唆急文の二十九回目――準伏線(佐々木と知り合いであることは、犯人の限定に重要)
準伏線:三答制のⅢ(上野は佐々木のたのみを断り、日食時は蛇崩町を出ていた)
示唆急文の三十回目――準伏線(上野の知るかぎり、佐々木は自分の木刀を下屋敷にもってきていなかった)
間四件の四:状況文
リーダビリティレトリック48型:漸層法
先の後:疑問

十章「未堂棟青人の覚醒」

後の先:遅れ否定
連用序文:会話
間四件の一:状況文
リーダビリティレトリック49型:列叙法
間四件の二:状況文
間四件の三:移動文
リーダビリティレトリック50型:直喩
間四件の四:観察文
主体伏線:トリック1計(偽の凶器である木刀は、剣術道場の裏手にある箪笥から盗まれていた)
主体伏線:三答制Ⅰ(佐々木の木刀を置いていたそばに、飲み水を溜める石水槽が置いてある)
準伏線(経子は佐々木の練習が終わるまえに帰宅し、そのあと、あらわれていない)
先の後:疑問

十一章「未堂棟青人の囲い罠」

後の先:遅れ仮説
連用序文:会話
間四件の一:観察文
主体伏線:トリック1計(風呂敷にはいっていた証拠品は、じっさいの殺しには使われていなかったことが判明)
主体伏線:トリック2計(大村昌村は尖端のとがった凶器で殺されている。いったいなにが、あてはまるのか。未堂棟は氾濫にかかわるものだと指摘する)
間四件の二:移動文
リーダビリティレトリック51型:列叙法
サスペンスリーダビリティ15形:事件性の高い逸話
主体伏線:リトリック4計(夏頃まで覆面の男ふたりが、怪しい薬を売っていた。未堂棟は青物問屋の主人から、粉末を回収する。当時の国外の戦争に関連したものである)
間四件の三:状況文
間四件の四:目的文
先の後:新事実

十二章「類別本格の読者への挑戦」

十三章「両目を閉じるが終」

後の先:疑問
連用序文:会話
間四件の一:観察文
リーダビリティレトリック52型:列叙法
落ち生まれ結び16形:出落ち
間四件の二:状況文
フラグ1計:不自然な言及
アトゥルー1計:作中にある言及から類推解釈
真トリック1計:完成品との交換
フラグⅠ:言動および行為の盲点
アトゥルーⅠ:犯行現場以外の行為故に可不可
三答制Ⅰ
間四件の三:状況文
フラグ2計:言動および行為の盲点
アトゥルー2計:作中にある言及から類推解釈
真トリック2計:特異な凶器
フラグ3計:不自然な言及
アトゥルー3計:作中にある言及から類推解釈
真トリック3計:職業(または天質)利用の犯罪に関するトリック
フラグⅡ:不自然な言及
アトゥルーⅡ:犯行現場の行為故に可不可
三答制Ⅱ
落ち生まれ結び17形:拍子落ち
リーダビリティレトリック53型:反復法
フラグ4計:不自然な言及
アトゥルー4計:実際にある既知から類推解釈
真リトリック4計:利己または利他
間四件の四:状況文
フラグ5計:その状況と似た前例
アトゥルー5計:作中にある言及から類推解釈
真トリック5計:密室トリック
フラグ6計:不自然な言及
アトゥルー6計:実際にある既知から類推解釈
真トリック6計:時計のトリック
フラグ7計:不自然な言及
アトゥルー7計:言及箇所の推理から類推解釈
真トリック7計:遠距離移動
フラグ8計:その状況と似た前例
アトゥルー8計:作中にある言及から類推解釈
真トリック8計:天候、季節その他の自然現象利用のトリック
フラグⅢ:証言による補強
アトゥルーⅢ:犯行現場の行為故に可不可
三答制Ⅲ
落ち生まれ結び18形:社会性の変化
リーダビリティレトリック54型:複数隠喩の二
落ち生まれ結び19形:仕草結び
落ち生まれ結び20形:題名結び
先の後:新事実


リ+トリック:18
フラグアトゥルー:22
アンサー:3
スリーアクト:20
レトリック:54
スタイル:121
ヒント:65


ワークワーク 類別プロット表(手掛かり索引+)

一番
主体伏線:トリック1京(視点者は、一月に冬のボーナスを使い切っている)
準伏線(ババイェの強調、一回目)

二番
準伏線(いつものようにボーナスだ、が矛盾となる)
主体伏線:トリック2京(食料2生産1、資産遺産、シリアルメーカー、自由の女神というフレーズが重要になる)

三番
準伏線(ボーナスが待ちどおしいならば、二番の歌詞はなんだったのか)
準伏線(ババイェの強調、二回目)

四番
準伏線(ふたたび、いつものようにボーナスをもらっている)
主体伏線:トリック2京(輪にかけ即移動、伐採黒字、アルミニウム社はゲーム用語である)

五番
準伏線(毎日ボーナスもらいたいは、ゲーム内のログインボーナスに対する現実のボーナスに向けたことば)
準伏線(ババイェの強調、三回目)

六番
準伏線(ふたたび、ログインボーナスの示唆)
主体伏線:トリック2京(企業、制覇、ジュエリー社、生産力、経済による勝利はオンライン上の戦いを意味している)

七番
主体伏線:トリック1京(七月。やっともらったボーナス。これは一番にあった冬以来、夏のボーナスである)
主体伏線:トリック1京(いままでの言及に対して、海外流通失敗つづきがそぐわない。偶数の歌詞には成功が書かれているからだ。ここで、奇数と偶数は、べつの話題だとわかる)

八番
落ち生まれ結び1景:捌け落ち
フラグ1京:言動および行為の盲点
アトゥルー1京:実際にある既知から類推解釈
真トリック1京:同じ場所に表現するが実際は別場所
フラグ2京:不自然な言及
アトゥルー2京:実際にある既知から類推解釈
真トリック2京:行為・手順・理由についての叙述トリック
落ち生まれ結び2景:登場人物の成長
落ち生まれ結び3景:台詞結び


リ+トリック:2
フラグアトゥルー:4
スリーアクト:3
ヒント:14


トータルポイント
303+23=326
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登場人物紹介


未堂棟青人……関東取締出役の役人であり、このシリーズの解き手である。八州廻りとも特別同心とも呼ばれている。徳川幕府から警察的な権限を与えられており、殺人事件の捜査、下手人の逮捕を関東全域で行っている。未堂棟家は武士階級のなかでも、とくに地位が高く、ほんらいは関東取締出役のような仕事をする必要はないのだが、本人のたっての希望により、この仕事に就いている。未堂棟家の計らいもあり、武家身分に対しても、厳しい捜査を可能としている。未堂棟は幼いころに、頭を強く打っており、体調は万全ではない。作中では左目の開閉が進むにつれて、全盛期の姿をとりもどしていく。覚醒前に伏線を集め、覚醒後に回収する。珍しい探偵構成を有した解き手である。




別府卯吉……未堂棟と同じく、関東取締出役に就いている。解き手の未堂棟に対して、別府は助手役である。別府の父親は未堂棟家に仕えており、ふたりは対等な友人として育った。未堂棟が頭を打ったとき、別府はすぐにそばにおり、大怪我の責任を感じている。そのせいか、覚醒前の未堂棟に対して、過保護となっている。八州廻りの仕事は、未堂棟のリハビリも兼ねている。そのいっぽうで、危険な目に合わせたくないと思っている。未堂棟に負担がかからないように、積極的に解決へと取り組む。意識的に、強い口調を選んでいるが、ときに、ほんらいの優しさがあらわれる。




瑞木新七……蛇崩町を中心に水屋の商売を行っている。代々の水屋である。御家人や旗本とも商売をしている。葉月に水だけではなく、氷をも売ることで、高い収入をえている。大村家にも飲み水を売っていた。作間藤三郎の甥にあたる。蛇崩町に強い愛着をもっている。



炊馬経子……作間藤三郎の遠縁だが、藤三郎のあとに、水番人の仕事に就きたいがために、彼と親しくしていた。しかし、大村昌村に藤三郎を殺害され、彼女の計画はご破算となる。経子の生活は、一層、困窮していた。現在は大村家の女中となっている。




作間政信……作間藤三郎の義理の弟にあたる。蛇崩町の周囲にある田園は、政信の手によるものである。藤三郎を殺害されたあと、大村家に殴りこみ、斬りつけられたことがある。身体が不自由となっていた。義兄を喪った精神的衝撃はおおきく、さいきんは、賭博に溺れている。




上野左衛門……作間藤三郎の従兄弟であり、蛇崩町にある万屋の主人である。日本産の物品だけではなく、どこからか仕入れた大陸産の物品も置いてある。大村昌村が夜中、上野とたびたび、密会しているところを目撃されている。大村家のほうは上野と親しくしていることを隠したがっている。



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