10節「すれ違う 2」
文字数 1,510文字
虚勢を張っているものの……
その声はか細く、表情も苦しそうです。
夢月くんはヨウタくんの前では、
本当に自然な彼を保っています。
きっとこれは、ヨウタくんのために
作ったものではありません。
これは何もできないーー不甲斐ない自分自身を
嗤っている時に出てしまう笑顔。
夢魔に憑かれていた時の私と同じ……。
それだけ夢月くんの心は、
今弱ってしまっているのだと思います。
私は……どうしてあげれば……。
露骨にうろたえながらヨウタくんを制止しました。
もしヨウタくんの夢が、
この前の失敗の話だったら……。
もしヨウタくんが、
夢の世界であったことを覚えていたら……。
ヨウタくんが話す内容はきっと……。
夢月くんが聞きたくないのも、
無理はありません。
この空間ではそれが冷たく鋭利に感じられます。
それを自覚したのか、彼は罰が悪そうな顔でお母さんに説明を行いました。
決して彼を否定することはしませんでした。
吏星さんに虚ろな瞳と心で問い掛けます。
夢想師として確固たる決意と覚悟を持って、
お母さんにその心をぶつけに行ったのです。
それが夢月くんの目にどう映ったかは、私には分かりません。
涙を浮かべた顔で夢月くんの方を見ました。
夢月くんに言葉を告げて去って行きました。
彼女もこの状況に納得しているとは、
とても思えません。
だから……その中でできる最良の選択肢を
選び抜いただけのこと……。
でもそれを今の夢月くんは……
受け入れることが……できるでしょうか……。
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