第9話:風邪をひいた日の話(その25)

文字数 680文字

「や・・・優し過ぎる?」

夏菜に「優し過ぎる」と言われ、ちょっとびっくりする。

え?
おれ、そんなに優しかったっけ?

と、思っていると、夏菜はコクリとうなずき、
「だって先生、私がひどいこと言ったり、冷たい態度をとったとしても、絶対怒らないし、逆に『自分が悪かった』って言うじゃないですか。
私の方が悪かった時も多いのに・・・」
と答える。

そう言われてみると、確かに夏菜に対して怒ったこと無いっけ。

というか、夏菜に怒られたら、逆に嫌われたくなくて、必死に謝っていただけだと思うけど、その行動が夏菜に『優しい』と思わせたのかもしれない。

夏菜はおれの手をギュッと握ったまま、頬を赤く染め、
「そういうところが、先生を好きになった理由なのかもしれないです・・・」
と言った。

「え・・・」

夏菜から改めて『告白』を受けたおれは、
「ああああああーっ!!うれしい!!」
と叫びそうになった。

が、そんな大声を静かな昼間のアパートで出すわけにもいかないので、グッと心の中で抑え込んだ。

でも、でも、でも、やっぱりうれしい!!

夏菜に『好き』と改めて言ってもらえたのが、すごくうれしい!!

一人『幸せ』をかみしめていると、夏菜が、
「あ、こんなことしてる暇じゃないですね!
お粥、作らなきゃ!」
と、手を離しキッチンに戻ろうとしたので、
「夏菜!」
と、思わず手をつかむ。

「え?」

夏菜が頬を赤く染めたまま、おれのことを潤んだ瞳で見つめる。

ダメだ、やっぱりガマンできない。

そのまま、手を引っ張り抱き寄せようとした時だ。

「グルルルル~」

と、また腹の音が鳴った・・・。

ああっ、もうっ!
何回、同じこと繰り返しているんだよ!!
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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