第12話
文字数 5,475文字
その時、キーはウッシーを返り見て合図した。
それを見たウッシーが猛ダッシュした。
彼らのいた壁際から老人までの距離は7、8メートル。その距離を詰めるために、アスリート体型のウッシーには二秒あれば事足りそうだった。ウッシーに少し遅れるかたちでキーも加勢しようと後を追った。
老人が嬉々をして声を上げるなか僕は、その二匹のウマそうなそのネズミが怯えた様子でちょろちょろと動きまわる様子に辛抱たまらず、気がつくとピアノの下から飛び出て追いかけていた!
僕の本能は理性と競争しながらも、格好の獲物だるネズミに追い込みをかけてゆく。
老人の心底面白そうに笑うが声が背後から聞こえた。二匹のネズミはまっしぐらに僕という捕食者から逃れるために猛ダッシュして、いちもくさんに穴飛び込んで行った。
僕はなんとか急ブレーキを踏んで、壁際の床に張り付くと身を低くしてその穴の先を覗いてみたが、その穴は真っ暗なだけで、しばらくするとみるみる塞がっていって気づくとただの白い壁に戻っていた。