シュールな……とは。 

文字数 1,156文字

 私は、空と雲がおそらく異常なまでに好きです。果てしなく眺めていられます(二度目)。

 きっかけは、たぶんあの時。小学5年で登った伊吹山(いぶきやま)から見た景色。初めて雲海を見下ろした、あの時。その時の感動は今でも覚えているから。

 そうして、自然の風景に()かれるようになった私は、美しかったり、神秘的だったりする景色を求めるままに、絵画に興味を持つようになりました。

 その頃は、クリスチャン・リース・ラッセンが流行(はや)っていました。画家です。とっても美しくて神秘的な海と、シャチやイルカの絵を描かれる方です。私も興味はありました。でも、好きになったのは、時にはラッセンと一緒に名前が出てくるほうの方。

 シム・シメール。

 彼の描く絵は優しいんです。空に惑星が浮かんでいたり、海や川が宇宙になっていたりするところは、ラッセンと同じく神秘的です。でも、彼の絵は全てが優しいんです。(えが)く対象も、色彩も、筆遣(ふでづか)いも。対象は、サバンナやジャングルや海にいる野生動物たちです。

 彼は “環境の未来を見つめるシュールリアリズム(※)” という画風で、環境保護団体に所属しながら創作活動を続けた画家です。その容貌(ようぼう)にも、もう動物たちへの愛情があふれているような方です。

 もとは、ファンタジーが一番好きな少女だった私。綺麗で雰囲気のある景色を求める趣味は、海外の中世を思わせる街並みやお城、それに宮殿や神殿へも向かいます。

 二層のアーチで構成された石造りの水道橋、丘の上の礼拝堂、赤いとんがり屋根が続く軒並(のきな)みと、石畳(いしだたみ)の街路・・・。

 そんなふうに趣味にばかり走っているから、気づけば時代遅れに。今は現代ドラマも書いてみたいなと思っても、なんにも浮かんで来ないし、ぜんぜん書ける気がしない。目を閉じて考えてみれば、見えてくるのはいかめしい城塞(じょうさい)や、剣を握りしめた戦士。ダメだ、こりゃ。

 ちなみに、シム・シメールの作品で一番好きな絵は、『天空の(とりで)』です。



●【シュールリアリズム】 

 「超現実」を意味する仏語「シュールレアリスム」(surréalisme)と、それに対応する英語「スーパーリアリズム」(superrealism)が混ざったもの。

 戦間期にフランスで起こった作家アンドレ・ブルトンを中心とする、非合理なものや意識下の世界を絵画や詩などで表現、追求した芸術運動のこと。ブルトンは『シュルレアリスム宣言』を発表し、「理性による監視をすべて排除し、美的・道徳的なすべての先入見から離れた、思考の書き取り」と定義した。

 美術用語としては超現実主義と訳される。


 今、普通に耳にする「シュールな・・・」はもともとコレ(シュールリアリズム/シュルレアリスム)の略ですが、「ありえない」という状況に対して使われていて、ちょっと違う意味になってますね(私もそう使う)。






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