セリフ詳細



○登場人物



ファルク・ノックス・ボルグイン(17)



 :ヴェイバルト王国の王子



スティレット・メリル・ヨーポルド(17)



 :隣国グインマルク王国の第二王女



 



バルバル:ファルクの使い魔



 



国王:ファルクの父親(40代後半)



  



 



 



※プロローグ



○ヴェイバルト王国・ファルクの部屋



   次期国王として幼い頃から帝王学を教



   え込まれてきたファル。部屋の中は書

   物庫をそのまま持ち込んだような多く

   の書物が部屋の半分以上を占め自分で

   自由に使えるスペースは半分以下ほど。



バルバ「今日も見事にやり通したバルねファルク様」



  ベッドの縁に座るファルに話しかける



  バル。風船状の使い魔のためフワフワ



  浮いている。



ファル「あぁぁったく、父さんも父さんだけ



 ど、ヘクト師匠(せんせい)の剣の稽古も



 厳しすぎるんだよ」



   ハァとため息を吐くファル。



バルバ「でも、ファルク様は次の国王になる



 お人。国を導く者としては大事バルけど……」



   複雑そうな表情のバルバ。



ファル「噂だと、父さんが僕の為にお妃とし



 て隣国の王女を連れて来るらしいんだけど ……」



バルバ「WOW! ファルク様に伴侶となる



 お方ですかっ! それは喜ばしい事バルねっ!」



   プクッと膨れ上がりポンポン跳ねるバルバ。



バルバ「きっと、可愛らしくて聡明で王女ら



 しい人ですよっ!」



   ニッコリ笑みを浮かべるバルバ。



ファル「あと、一番重要なのは……」



   バルバを両手で捕まえるファル。



ファル「巨乳であること!」



   真面目に言い放つファル。



 



○ヴェイバルト王国・玉座の間



   数日後、ファルの妃となる王女がやっ



   て来る。



   王の他、王に仕える臣下達が見守る中、



   下女を従えた王女(レット)がファル



   の元へと歩いてくる。



  →全身を覆い隠すローブを着ているレット



  →このカットの頭に城の外観と「グイン



   マルク王国よりご到着なさいました!」



   と家来の一言を入れる



 



   少し緊張した面持ちのファル。一度ゴ

   クリと唾を飲む。

   王女(レット)は一人下女達から離れ

   ファルの隣に立つ。そして玉座に座っ

   ている王に対し一度会釈する。



レット「グインマルク王国、第二王女スティ



 レット・メリル・ヨーボルト、参りました」



   姿勢を戻すレット。



国王 「うむ。此の度の縁談、快く承諾して



 もらいそなたに感謝しておる」



レット「めっそうもございません。二国は同



 盟関係を結んでおりますゆえ、縁談に際し



 私の父上もとても喜んでおられました」



国王 「そうかそうか。そなたの父君にも礼



 を尽くさなくてはならんな」



   満足そうに顎鬚を撫でる国王。



国王 「我が息子に顔を見せてやってくれ」



レット「はい」



   流れを察した下女の一人がレットに歩



   み寄る。レットはローブを下から脱ぎ



   始め最後フードを上げる。



  →このカットはレットの体のパーツを細く描く



  →胸のカットではファルがおっ! とな



   る目のカットも添えて



 



   ローブを脱ぎ下女に渡すレット。



レット「お初にお目に掛かりますファルク様」



   ファルの前でおしとやかに会釈をして



   見せるレット。



ファル「……」



   レットの美貌に目を奪われてしまうファル。



ファル『なっ、何て大きいんだろう……』



   レットの胸に思わずゴクリと喉を鳴ら



   すファル。



 



 



  T:ドラゴン&ブレスト



 



 



○ヴェイバルト王国・中庭



   中央に噴水と花壇が整備された中庭で



   響く金属音。空を小鳥達が舞う。



ファル「ハァ、ハァ、ハァ……」



   肩で息をする全身アーマーを着込んで



   いるファル。尻もちをついている。



レット「これほどで音を上げるとは……将来、



 国を担う者として恥ずかしくないの?」



   ファルを上から目線で訓練するレット。



   右手には兵士が使用するロングソード



   を持っている。



ファル「むっ、無茶言わないでよっ。きっ、



 君に勝てるわけないじゃん……」



   鬱陶しそうに兜の面を上げるファル。



   額から汗が滴る。



レット「私に勝ですって? 勝てるとお思い



 ですか? このザマで」



   ファルに剣先を向けるレット。



ファル「ぼっ、僕には無理なんだよ、所詮……」



   言いかけてレットが上げた面を叩き下げる。



レット「正直、失望しました。数々の功績を



 残した陛下のご子息とばかり期待してたの



 に、この軟弱さ加減……」



ファル「と、父さんと僕を一緒にしないでよっ!」



   再び面を上げるファル。



ファル「大体、僕を鍛えるなら、もっと優し



 くしてよ。一応、君は僕のお妃なんだろ?」



   恨めしそうに見上げるファル。



レット「えぇ、一応ねっ!」



   グッ! と身を乗り出したためレット



   の胸元が目の前に迫る。思わず谷間に



   目が行ってしまうファル。



レット「こんな弱腰王子様、生まれて初めて



 会ったわ!」



   捨て台詞を残し去っていくレット。使

   っていた剣を兵士の一人に返す。



ファル『……好き好んで弱くなったわけじゃないよ』



   力なく項垂れるファル。



 



○場内



   ファルに稽古を付けていたレット。場

   内に戻り自室に戻る途中にファルの父

   (国王)と会う。



レット「国王陛下、ごきげんよう」



   身を低くして会釈をするレット。



国王 「うむ、今日も精が出るなスティレット」



   一つ小さく頷く国王。



レット「いえ、これも陛下やファルク様、そ



 して国のためでございます」



   国王とわざと目線を合わさないように



   するレット。



国王 「そなたには済まないと思っている。



 あの王としても男としても未熟な息子の妃



 として来てくれた事……」



   レットの左手を取り立たせる国王。



国王 「その上、ファルクを鍛えるという使



 命まで担わせてしまい、誠に済まぬな」



   レットの左手を両手でサンドする国王。



レット「そ、それに関しましては、少々手こ



ずるかと……」



  視線を外しやや苦笑いを浮かべるレット。



国王 「匙加減はそなたに任せる。ソウショ



 ク系? のファルクをニクショク系? の



 ワイルドな男にしてやってくれ」



   ポンポンと手の甲を叩く国王。



レット「かっ、かしこまりました」



   最後レットはしっかりと国王に力強い



   視線を向ける。



 



※レットによるファルクの鍛錬風景



○ファルクの部屋(朝)



   朝日が差し込む窓の側のベッドで無防



   備な顔で寝ているファル。グ~グ~い

   びきをかいている。

   耳元で鳴らされるガンガンという金属音。



ファル「ん~あ~っ! うるさいっ!」



   目を閉じたまま叫ぶファル。ピョンと



   上半身を起こす。



レット「ほら、いつまで寝てるの? 今日も修行よ!」



   しっかり身なりを整えているレット。



   右手には剣を左手には兜を持っている。



  →ここの最初カットは鳴らすシーンから



 



ファル「え~っ……今日は気分的にやりたく



 ないんですけど……」



   機嫌悪そうに頭を掻くファル。



レット「何言ってるのよ! 良き王は一日に



して為らず。毎日の積み重ねが大切なのよっ!」



  レットが適当に放り投げた剣と兜がフ

  ワフワ浮きながら寝ているバルバルに

  ポヨンポヨンと当たる。



バルバ「フガッ……」



   ここで目を覚ますバルバ。



レット「さっ、行くわよっ!」



   ズルズルとファルの手を引っ張りなが



   ら部屋を出ていくレット。



ファル「イタイッ! ひっ、引っ張るなってば……」



   ズルズルとバルバの横を通っていくファル。



バルバ「ファルク様……今日も……ムニャムニャ……」



  再び寝てしまうバルバ。体の側にzz



  zと出す。



 



○乗馬場



   城が管理している厩舎から管理人と共



   に馬を引いてくるレット。



レット「ヴェイバルトも良い馬を持ってるわね」



管理人「お褒め頂きありがとうございます」 



   場内の中庭にある屋内馬場へと入るレット。



  →二頭はすでに鞍や口輪が付いている



 



レット「聞いてなかったけど、ファルクって



 もちろん馬に乗れるわよね?」



   連れてきた馬の首を撫でながら話すレット。



ファル「のっ、乗れない事はないけど……」



   やや不安な表情のファル。ファルの横



   に馬を連れて来る管理人。



管理人「おや、いつの間に乗馬をマスターな



 されたのですかな? 一度たりと見た事が



 ございませんが」



   小首を傾げる管理人。その言葉にキッ



   !と睨みを利かせるレット。



レット「……なるほど」



 



   難なく馬に跨るレット。一方のファル



   は管理人の手を借り四苦八苦しながら跨る。



レット「はぁ、つくづく情けないわね。それ



 でも王子なの?」



   手綱を操りファルの乗る馬に近付くレット。



ファル「うっ、うるさいな、たまたま機会が



 なかっただけだよ」



   横に並ぶレットに文句をぶつけるファル。



レット「そうですかっ」



   軽く聞き流し先に馬場を一人でゆっく



   りと回り始めるレット。



   ファルは怯えた様子で手綱を手に馬に



   歩くようにと鐙を蹴る。二度三度と蹴

   ると馬は驚いてしまいファルを払い落

   してしまう。



ファル「うあっ!」



   右足が鐙に掛かったままの状態で落馬



   するファル。



レット「はぁ……」



   ファルの横で馬を止めるレット。ため

   息を吐く。



 



レット「よいしょっと」



   馬に二人乗りするファルとレット。



  →前はファル、後ろがレット



 



レット「ファルクは怯え過ぎなのよ。もっと



 心を落ち着けて優しく扱うの」



   ファルを前に座らせたままで手綱を握



   るレット。そしてゆっくりと歩き始める。

   初めての感覚に高揚感を覚えるファル。

   ゆっくりと回る途中でファルに手綱を

   預ける。ここで手と手が触れる二人。



ファル『うわっ!』



   一瞬違うドキドキを感じるものの乗馬



   に集中するファル。



レット「そう、その調子」



   乗馬場をゆっくりと回りながら少しず



   つ慣れてくるファル。



レット「少しスピードを上げてみましょ」



   ファルに鐙を蹴らせるレット。ゆっく



   りだった歩きに少しスピードが出てくる。



ファル「おぉっ! おあっ!」



   姿勢をキープしながら手綱を握るファ

   ル。高揚感が増していく。



レット「そうそう、乗馬は楽しいものなのよ」



   少しだけ手綱を引かせスピードを落とす。



レット「そうよ。やればできるじゃない」



   さりげなく体を密着させ手綱を持つフ

   ァルの手の上に手を添えるレット。



ファル『うっ?!』



   背中に感じる柔らかい感触。レットの



   胸が押し当てられていると察知するファル。

   パァッと表情が緩むファル。思わず手

   綱を思いっきり引っ張ってしまう。

   それに対し嫌がる反応を示す馬は前足

   を上げて二人を落とそうとする。



ファル「うわぁっ!」



レット「あっ!」



   二人共落馬してしまう。



   興奮した馬をなだめる管理人。



レット「ちょっと、どうして急に引っ張ったのよ!」



ファル「イテテ……ごっ、ゴメン……プフッ!」



   怒られているにも関わらず急に吹いて



   しまうファル。落ちた拍子に顔に砂が



   付いたレットの顔を見てしまった。



レット「なっ、何よ……こっちは怒ってるん



 ですけどっ!」



ファル「ほっ、ホント落としちゃってゴメン」



   手袋を外しレットの顔に付いた砂を払



   い落とす。



レット『はっ……』



   不意に顔を触られドキッとしてしまう



   レット。



レット「あっ、ありがと……」



   恥ずかしそうにそっぽを向くレット。



 



※ショートカットで



○兵士鍛錬場



   兵士達に混じって藁人形相手に基本と



   なる戦いの動きを体に教え込むファル。



   レットは三人の兵士と三対一で組手を



   していた。本気で向かってくる兵士を



   軽々と倒す。



   その様を動きを止めて見つめるファル。



ファル『やっぱ、強いな……』



   コンコンと床を木剣で叩くファル。



 



   やや動きやすいドレスを着たレット。



   手にした木剣を手にまるで踊るように



   相対する。フワリとスカートを翻し体



   を躍動させる。



  →最後にファル目線でレットの胸を入れる



 



レット「ハァァッ!」



   最後兵士の胸に鋭い一撃を叩き込むレ

   ット。払った姿勢で床に手を付くくら

   い低い姿勢で止まる。サッと舞う汗。

   そしてゆっくりと立ち上がるレット。



レット「手合わせ感謝する」



   レットとの手合わせでダメージを負っ



   た三人の兵に対し礼を述べるレット。



   対した三人の兵士は痛そうにしている。



レット「手加減したつもりだが、やり過ぎて



 しまったかもしれない。直ぐに手当てを」



   労いの言葉を述べてその場を離れるレ

   ット。ファルの所に来る。



  →来ると気づき戦いの動きに戻るファル



 



レット「どう? 基本の動き覚えた?」



   腕を組んだために無意識に胸を強調す



   るポーズをするレット。間近にあるレ

   ットのしっとり汗ばんだ胸に目を奪わ

   れるファル。



ファル「……」



   胸をガン見するファル。ファルの視線



   に気づくレット。



レット「……どこ見てンのよっ!」



   木剣でファルの頭を叩くレット。



ファル「ガフッ!」



   首を引っ込めるファル。



レット「男って、みんな胸が好きなのかしら……』



   いってぇ~と頭を押さえてしゃがみ込



   むファルを見下ろすレット。



 



○レットの部屋(夜)



   いよいよ明日ドラゴンの棲む洞窟へ向

   かう事になる二人。この先の事で不安

   なファルは夜がとっぷり暮れた時間に

   レットの部屋を訪ねる。



  →寝間着姿のファル



 



ファル「こんな時間だから、もう寝てるかもな……」



   燭台を手に部屋を訪ねるファル。寝て



   るかもしれないとノックも無しにゆっ

   くりとドアを開ける。隙間から室内を

   覗くと灯りがついている事に気づく。



ファル「あれ、起きてる?」



   起きていると察知しロウソクを消して



   中へ入るファル。



ファル「スティレット起きて……」



   ドア付近のパーテーションを避けて入



   るファル。すると着替え途中のレット



   を目の当たりにする。



  →この時ガーターベルトを外そうとした



   タイミング



 



ファル「わ、わ、わっ!」



   どうにかレットを見ないようにと慌て



   るファル。



   一方のレットは平然としながら近くに



   あったカーディガンを羽織る。



レット「こんな時間に何の用?」



   腕組みをして堂々と立つレット。



ファル「あっ、あのだな、多少恥じらいとか



 ないのかよ?」



   薄目で見ても大丈夫なのかを確かめた



   のち態勢を直すファル。



レット「女に恥じらいを求めるのは今ドキ古いわよ」



   鏡台の前にある椅子に座るレット。



レット「で、何の用? 明日は大事な日なん



 だから、早く寝た方がいいわよ」



ファル「寝ようとしたさ、何度も。でも、寝



れないんだ……」



  ファルは移動しレットが使うベッドの

  縁に座る。



レット「……不安に思うのは仕方ないと思う



 わ。今まで実戦という実戦をしてきた事が



 ないんだもの」



   クルッと向き直り脚を伸ばすレット。



ファル「君も無茶だって思わないかい? ド



ラゴンに立ち向かえだなんて」



  口を尖らせて文句を言うファル。



レット「それがヴェイバルト王国の国王とな



 る者のしきたりなら、仕方ないんじゃない?」



ファル「でもさ……」



   ベッドに仰向けに倒れるファル。



レット「運命が決めつけられた気がするんだよな……」



   何気なく呟いた一言にレットもハッとなる。



レット『私も、何も疑問に思わず、父上の言



 うままに生きてきた。父上の口にする事は



 全て正しいと……』



  →回想的に幼いレットと姉が厳しい剣の



   稽古をしているカットを入れる



 



ファル「周りから王子、王子って崇められて



 窮屈なんだよ。僕だって人間なんだ。誰か



 に甘えたいし自由に遊びたいんだよ……」



   レットと反対の方に向くとそのまま静

   かになってしまう。



レット「ファルク?」



   変だと思いファルに近付くレット。側



   に座るとファルの顔を覗き込む。スー



   スーと寝息をたてていた。



レット『もう……私のベッドで寝ないで欲しいわ……』



   一度体を起こしため息を吐くレット。



   何気なくファルの顔を覗き込む。



レット『何だかんだ言って、私もファルクも



 他人(ひと)から言われた道を歩かされてるのね』



   スヤスヤ寝てるファルの顔を近付いて



   見るレット。



レット「……抗えない道を」



   すると急に寝返りをうつファルはレッ



   トに絡みつくように抱き着くと胸や太

   ももをまさぐりだす。



レット「ヒャッ! ちょ、ちょっとっ!」



   力づくで抜け出そうとするものの無意



   識とは思えない触り方に力が出ないレット。



レット『ねっ、寝てるのに……どうして……』



   必死に喘ぎ声を出さように人差し指の



   横を噛むレット。



   モゾモゾと動くファルの手。ムニュッ



   ムニュッと胸やお尻を揉む。



レット『なっ……何なの……コレ……』



   噛んでいた指が離れ喘ぎが漏れてしま



   うレット。何とか理性を保ちファルの



   手から逃げる。



レット『ハァ、ハァ、ハァ……』



   着崩れた衣服を整えつつファルに視線



   を向けるレット。



ファル「ん……母さん……」



   寝言を言いつつ頬を涙で濡らすファル。



レット「……」



   慈愛に満ちた微笑みを浮かべつつファ



   ルの涙を人差し指で拭うレット。



レット「いい夢を、ファルク」



 



○荒野



   草木の生えない荒野の道を馬に乗り歩



   く二人。馬の両サイドにはそれぞれ荷

   物を積んでいる。



ファル「はぁ……気が引けるなぁ……」



   ガックリ項垂れるファル。背中には自



   分の背丈と同じくらいの大きな剣を背

   負っている。



レット「これからドラゴンと立ち向かうとい



 うのに、何ですかその弱気発言」



   気丈に振る舞うレット。



ファル「どうして君は平気なんだよ。相手は



 ドラゴンなんだぞドラゴン。本で知ったけ



ど、地上最も獰猛で野蛮で、その上知能も



高い生物なんだぞっ!」



   馬の上で身振り手振りを交えてレット



   に訴えるファル。



レット「分かってるわよそれくらい。加えて



 空も飛べるし火炎も吐く。ここまで来たら



 観念する事ね」



   意地悪そうに口元に笑みを浮かべるレ

   ット。一人先に馬を進める。



ファル「何だよ、楽しそうに……」



   悪態を吐きつつレットを追いかけるファル。



 



○ドラゴンの棲む洞窟



   目的の場所に着いた二人。馬を降り必

   要な荷物だけ下す。



  →ファルは王家の証となるお守り(アミ

   ュレット)を用意している


   自分の荷を用意し終えたレットはファ

   ルの馬に積んだやたら大きい袋に気づく。


ファルは洞窟の入口に結界が張ってあ



るのを調べるため拾った小石を何もな



い入口に投げる。すると小石は氷が融



けるようにサラサラの砂になってしまう。



ファル『やっぱ、ここか……』



   ゴクリと唾を飲むファル。結界を解く



   ためアミュレットを結界に押し付けて



   結界を解く。



 



   一方のレット。袋に何が入ってるのか



   を確かめるため袋の紐を解く。すると



   ポーンと何かが勢いよく飛び出しレッ



   トの顔に直撃する。



レット「んがっ!」



   ガクッと顎が上がるレット。



レット「なっ、何なのよ一体っ!」



   勢い余って尻餅をつくレット。



バルバ「ファルク様ぁ~っ! ファルク様ぁ~っ!」



   一目散にファルの方へと飛んでいくバルバ。



ファル「バルバル、どうして出てきたんだよ」



   ファルの目線の高さで静止するバルバ。



レット「ファルク~ッ!!」



   怒りが沸き起こるレット。ガシガシと



   大袈裟な動きでファルに近付く。



レット「どうしてこんな場所にバルバルがいるの?」



   腰に手を当ててファルの顔を覗き込む



   レット。



ファル「さ、さぁ……」



   目線を逸らししらばっくれるファル。



レット「っもう、付いて来るのは勝手だけど、



 何があっても知りませんからね」



   剣を差し直し冒険道具の入った袋を肩



   に掛けて洞窟へと入るレット。



   レットの後ろ姿を見送ってしまうファ



   ルとバルバ。



 



○洞窟内



   洞窟内の足場は悪くジメッとした空気



   が漂い照らすものが一切ない。



ファル「スティレット、灯りありがとう」



   素直に礼を述べるファル。



レット「まったく、遠足気分じゃ困るんです



 からね」



   油を染み込ませた布を木の棒に巻き付



   け松明としていた。それをファルが持つ。



ファル「だからありがとうって言ってるじゃ



 ないか」



   レットの小言に言い返そうと振り返っ



   た時レットが躓いてしまいファルが手



   を取って支える。



ファル「おっと、足元注意」



   よっと、とレットを自分の方へと寄せ



   たため二人の距離が近づく。



   ファルはレットの胸、レットは昨晩の



   事で互いに頬が赤くなる。



   互いに変な空気になってしまいどちら



   からともなく唇を重ねようとした瞬間!



バルバ「アチッ!」



   熱がるバルバの声に正気に戻る二人。



   ハッとして互いに離れる。



ファル「ごっ、ゴメン……」



レット「こ、こちらこそ……」



   互いにモジモジする二人。



バルバ「お二人共、足元に注意バル」



   ファルの松明に注意しつつ二人に注意



   をするバルバ。



ファル「あ、あぁ、そうだな」



レット「そっ、そうね」



   改めて心を引き締める二人。



   再び奥へと歩き始める二人。



レット「それから……私の事、レットでいいわ」



   正面を見据えながらボソッと呟くレット。



ファル「レット?」



   チラッとレットを見るファル。



レット「これは親しい人にしか言わせない愛



 称だから……」



   少しだけ優しい表情を見せるレット。



ファル「分かったよ、レット」



   距離が近くなった気がしたファル。洞



   窟の奥へと進む。



 



○ドラゴンの棲み処



   長く入り組んだ洞窟を進む二人。暗く



   狭い場所から突然開けた場所へと出る。



   そこは天井がなく外からの陽射しが差

   し込み天然のステージとなっていた。



ファル「うわっ、眩しい!」



   二人共陽射しを眩しがるように目元を



   手でかざす。目が慣れてくると目の前



   に翼を畳み休んでいるドラゴンの姿に



   気づく。



レット「ド、ドラゴン!」



   一瞬身じろぐもののいつでも剣を抜け



   るように柄に手を添えるレット。



バルバ「フワァ~ッ! とても立派なドラゴ



 ンバルね」



   ファルの右隣で浮いているバルバ。



ファル「あれが……ドラゴン……」



   生まれて初めて見るドラゴンの迫力に



   気圧されてしまうファル。



   一方のドラゴン。目は閉じているもの



   の何か違和感を嗅ぎ付け鼻をヒクヒク



   させる。両目を開けて首をもたげる。



ドラゴ「この臭い、ボルグインの血筋の者だな」



   両前足を突いて上半身を起こすドラゴ。



ドラゴ「こちらへ来るがよい。何、取って喰



ったりせん」



  ドラゴの言葉に反応するレット。一方



  威圧感に体が動かないファル。それに



  対しレットが右肘でファルを小突く。



  何度か小突きようやく足を進めるファル。

  足元は大小様々な岩が転がっているた

  めドラゴンに近付くため避けながら進む。

  そして二人とバルバはドラゴンの至近

  距離まで近づく。



ドラゴ「よく来たなボルグインの血族の者よ。



 ん? 今回は娘っ子か?」



   ジロリとファルとレットを睨むドラゴ。



レット「やっぱり威厳が無いようねファルク」



ファル「う……ドラゴンなら威厳とかなくて



も、ボルグインの者って見抜くと思ったけど……」



  ガクッと項垂れるファル。



バルバ「ファルク様は威厳が無くても、ボル



グイン家の一人である事に間違いないバル」



  ファルを励まそうとするバルバ。



ファル「余計傷付く……」



   シクシク泣いてしまうファル。



ドラゴ「ハハハ、落ち込むな若人よ。お主の



 背負う大剣を見れば一目瞭然だ」



   フーン! と鼻息を吹かせるドラゴ。



ドラゴ「人とドラゴン、生きる早さが違うも



 のだな。先代・先々代が儂の元にやって来



 た日が昨日のように思える」



ファル『やっぱり、父さんも、父さんの父さんも……』



   改めて王となるために通らねばならな



   い試練だと感じるファル。



レット「で、あなたとファルクが立ち向かう



 って事で来たけど、具体的に何をすればい



いのかしら?」



  腕組みをしつつ休めのポーズをするレット。



ドラゴ「それは……お主達次第!」



   上半身から先に起こし立ち上がるドラ

   ゴン。咆哮を上げる。

   地上最強生物の咆哮に体の芯まで恐怖

   が染みたる。



ドラゴ「具体的などない。お主達の『心』を示せ!」



   バサバサと翼を羽ばたかせるドラゴ。



レット「ファルク! 行くわよっ!」



   差した剣を抜くレット。



バルバ「ファルク様、訓練の成果を見せる時バル!」



   二人からのプレッシャーに戸惑いを隠

   せないファル。渋々背中の大剣を取る。



ドラゴ「やはり挑もうとするか人の子よ。己



 の命を落とすやも知れぬのだぞ?」



   威圧するように近くの岩に炎を吐くドラゴ。



ファル「それでも……それでもやらなきゃダ



 メなんだ。国王になるために、そして、レ



ットを守るためにっ!」



  震える手に力を込めてドラゴと対峙す



  るファル。レットの前に出る。



レット『ファルク……』



バルバ『ファルク様』



   少し逞しさを感じるレット。



ファル「レットのおっぱいは、僕のものだっ!」



  →このセリフの時背後のレットは少し脱



   力ぎみに



 



   大剣に力負けしながらも持つファル。



   よろけながらも必死に駆け出し地面か



   ら顔を出す岩を踏み台にして跳躍する。



ファル「ハァァァッ!」



   剣を大きく振り上げるファル。ドラゴ



   へ向かっていく。



   次の瞬間、ドラゴは後ろ足だけで立ち

   上がるとファルの剣を両手で挟み白刃

   取りをする。宙づり状態のファル。



ファル「ウグッ!」



ドラゴ「お主の『心』見させてもらった」



   挟んだままファルを巨岩の上に下すドラゴ。



ドラゴ「人の命は短い。だからこそ見えるも



 のがある。今の勇気、忘れるでないぞ」



   一度ファルを正面から見るドラゴ。

ドラゴ「久しぶりに下界を見てくるとするか」



   天井の穴から飛び立つドラゴ。



   残された二人と1匹。



ファル「……」



   呆然としているファル。そこへ岩から



   岩へと渡ってファルの所へ来るレット。



レット「ちょっと見直したけど、不純なセリ



フはいただけないわね」



  少しだけ不満を見せるレット。



ファル「つっ、つい本音が……」



   バツが悪いファル。すると突然レット



   から口にキスをしてくる。



ファル「んっ!!」



   目を見開くファル。そして離れるレット。



レット「私以外の女に現を抜かすのは許さな



 いからな」



   ほんのり頬を赤くするレット。



ファル「うっ、うん!」



   決意を新たに頷いて見せるファル。



  →ラスト引き画で岩の上に立つ二人の姿



 



 



             END



 



作品タイトル:ドラゴン&ブレスト

エピソード名:1話

作者名:ホクロっクマ  hokuro1984

3|ファンタジー|完結|1話|13,549文字

ヤンマガ漫画原作応募, 連載可

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おっぱい王子、ドラゴンに立ち向かう!

ヴェイバルト王国の王子であるファルク。ちなみに巨乳好き。
将来国を導かなければならない地位にありながら、
日々をのほほんと過ごしていた。
そんな姿を見かねた国王は、隣国から妃としてスティレット
を招く。
彼女にはファルクを鍛え、試練であるドラゴンに立ち向かわせる
という役目もあり、厳しく接する。
一緒に過ごすうち、お互いに母親を早く亡くすという共通点が
ある事に気づく。
そして、まだ不十分な段階にも関わらず、ファルクとスティレットは
試練へと赴く。