第28話ソフィア喫茶店営業再開

文字数 1,047文字

営業再開当日になった。
飛鳥は、カウンターで営業開始直前まで、グラスを磨く。

奈緒は、まだ開かない店のドアの外を気にしている。
「行列やな、ほんまに」
「飛鳥さんの人気や、気合が入る」

美鈴も少し緊張。
「座席も時間も全て指定」
「でも、全て枠が埋まるから、休む暇はないよ」

香苗はキッチンにいる。
「クッキーは人数分プラス余分もある」
「クッキー限定にして正解」

営業開始時間となった。
美鈴が店のドアを開けると、予約客が列をなして入って来る。
そして、全ての客が飛鳥の前に進み、花束やプレゼントを渡している。

全員が座席に着き、飲み物とクッキーを配り終えたところで、飛鳥がスピーチをはじめた。

「皆様、心配させて申し訳ありませんでした」
「不注意で、風邪をこじらせて、店を休んでしまいました」
「休んでいる間、ご心配をいただき、様々なご厚情も」
「そして、今日もこれほどまでに」
「森川飛鳥、心より感謝いたします」
「今後は、体調を不用意に崩さないように、健康管理には注意いたします」

客の中から、一人、立ちあがった。
映画監督の羽田だった。
全員に少し頭を下げて話し出す。
「飛鳥君は、こういうことは時々ある」
「しかし、一週間はなかった」
「私たちは、すごく心配して」
「そして寂しかった」
「全員が、飛鳥君との、やり取りを、楽しみにしている」
「それが、あって、嫌なことも忘れて、次の活力があったのだから」

話を聞く全員が頷き、飛鳥は照れたような顔。

羽田は続けた。
「やはり、健康管理は大事」
「それを肝に銘じて、飛鳥君は夜更かしは厳禁」

全員からクスクス笑いが漏れる中、飛鳥は申し訳なさそうな顔。
「秋の夜で、風が気持ちよくて、おまけに名月」
「お酒を飲んで、ベランダで読書」
「うかつなことに、少しうたた寝」
「それが原因です」


香苗がキッチンから出て来た。
「本当に我が弟ながら、情けない」
「皆様に申し訳なくて」

しかし、客からは、香苗より、飛鳥に声がかかる。
「今後、読書は部屋の中限定に」
「夜更かしは厳禁にしてね」
「私、セーター編むかなあ」
「そう?それなら私は手袋にする」
「風邪引かれると、デート誘いも出来ないからね」
「何を言っているの?みんなフラれているでしょ?」
「いや、今度こそ、温めないと」
「・・・それ・・・あやしい・・・でも私も・・・いいかも・・・」

香苗と美鈴は、途中から呆れ顔。

奈緒は、飛鳥の「実態」に驚き、焦る。
「あかん・・・関東の女の毒牙にかかる寸前や」
「かなり気合を入れんと、持って行かれる」

また、危険なことに、飛鳥は客席を回り始めている。
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