第2話 Leo

文字数 1,382文字

 今日も廃墟のプラレタリウムに私はいる。もう何年も使われていないだろうこの施設に、いまだに電気が通っているのは、人々のほんの少しの夢か何もかもが他力本願な現代人の習性による置き土産かもしれない。けれどもそんな事情とは裏腹にこのドームは輝いていて、いつも私にとっての心の何かだった。
「今日は雨がひどいな」
どさっ
「だ、誰かいるんですか」
そこにはずぶ濡れの男が倒れていた。
「大丈夫ですか、息してますか。」
「ここは」
男は一言言ってまた意識を失った。
 僕は男子高校生。間違いなく言える、僕は頭がいい。ユーモアもある。今まで勉学については苦労したことはないし、いつだってクラスの人気者だった。でもこれも必然だと認識してた。いや嘘だ。本当の僕は、すごくネガティブでカニみたいな甲羅に本当を置いて、表はいつだってピエロが演芸を繰り広げてた。きっとそうだ。陰鬱な性格までは隠しきれないみたいで、中学までは地元の友人らと、身内のうちうちのコミュニティだったものの、高校という様々な人種がいる中で、僕は痛いナルシストとして浮いた。自覚しているのなら直せばいいのだろうが、対人コミュニケーションを道化に任せていたから、人に笑ってもらうためのキャラ付けピエロがいつかは自分を超えて、考えるよりも口に出て、気づけば自分が何を見て何を思えばいいのかわからなかった。花を見ても、蝶を見ても気づけばピエロがでしゃばって、人気者だった頃のプライドを消せなくて、傷付かせることしかできなくなった。

「そんな遠くから来られたんですね」
「はい。雨に打たれて意識が朦朧として、気づけばここにいました。」
「ねぇねぇお兄さん、名前は?」
「明山 洋生です」
「じゃ、あっきーにゃ、ね」
「なんですかそれ。」
「あっきーはさ、嫌なことでもあった?」
「てか早速違うし。まぁでも嫌なことはありました。」
「なになに」
「お前と一緒にいると気分が悪い」
「言われたんです。」
「あらまぁ。なんでまた」
「僕、性格に難ありで」
 僕は気づけば1人だった。いや僕自身も僕がひどく憎かったから、僕の心には僕さえいなかった。もちろん靴は無くなったし、無視もされた。何よりも辛かったのは、自分でも自分を傷つけたい衝動に駆られることだ。自分はもっと大きな罪を犯した気もするし、このままでは、何て考えるとまた明日が来る。回る日々をどうにかしたくて、雨の日僕は街を出た。
「僕って変ですよね」
「そうかな」
「そうですよ。いつも人を傷つけちゃうし、思ってもないのに反射で出ちゃって、なんだか自分を軽い殺人鬼みたいで自分が怖いです」
「いいこと教えてあげる。それって、誰にでもあることだよ」
「えっ?」
「そりゃ自分をピエロだとか殺人鬼って自称するのはやまちゃんの本来持ち合わせてる痛キモいところだろうけどさ、」
「なかなかきますね」
「でも、思ってもないことを言っちゃうなんてありがちだよ。反抗期の親への態度だってそうだし、好きな子には意地悪な態度をとりたくなるのもそう。でも明リズムの本当に考えるべきところは、自分が何をしたいかはっきりしないこと。この際なんだからさ、言っちゃお。カモンbaby」
「そうですね。でもいまひとつ夢ができました。」
「お〜。なになに」
「僕、多分好きです」
「何が」
「あなたのことが」
「ん?」
「付き合ってください」
「?????????????」
つづく
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