文字数 333文字

 その川では、以前、美里という少女が亡くなった。
 集団登下校が早苗と一緒で、最後には二人きりになるので、仲もよかった。
 その美里が、学校から帰ってひとりで遊びに行き、川に落ちてしまったのだという。
 それ以来岸辺には柵ができ、川遊びも禁じられた。
 さらに、美里の幽霊が出るという噂までたった。
 優しい性格だった彼女が、いつしか怖ろしい存在として語り継がれるようになったことに、早苗は複雑な気持ちだった。
 しかし、中学からは隣町へと通うことになり、さらには大学進学のため上京、そのまま就職結婚出産、そして離婚さえも都会で経験しているうちに、そんな話自体もいつしか忘れてしまっていた。
 それがまさか、優美まで同じ目に遭うとは。
 早苗は恐怖で身を震わせながら、懸命に走った。
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