第1話 プロット

文字数 826文字


小学五年生の陽子は、友達と遊ぶよりも一人で読書をする方が好きな女の子。
ある日の放課後、学校の図書室で『幻のペンフレンド』という小説を見つけた。陽子はストーリーは勿論だが、それ以上に『ペンフレンド』という存在に心を惹かれた。
「口下手な私でも文通でなら会話ができるかもしれない。ペンフレンド、ほしいなぁ」
陽子は感想カードに書き込むと、栞の代わりとして小説に挟んで書架に戻した。


帰宅後、陽子は家族に『ペンフレンド』について尋ねてみた。両親は言葉の意味は知っていても実際に見知らぬ人との文通の経験は無かった。陽子は『ペンフレンド』が欲しかったのだが、両親の否定的な態度に言い出せず話は終わった。
翌日の放課後、昨日の続きを読もうと小説を開くと、自分の感想カードとは違う紙(擦れて判読できないレシート)が挟まっていた。「初めまして。君は口下手なの?しっかり自分の意見が言えてるのに」綺麗な字だった。陽子は小説の続きよりもこちらの手紙が気になって仕方なくなった。やり取りを数往復つづけた。相手が誰なのか気になるが、直接会って会話すれば、相手は自分の口下手さに嫌気がさして仲良くしてくれないかもしれない。そう考えると怖くて
相手のことを詮索する気にはなれなかった。


残り数ページ、もう少しで小説を読み終えてしまう。ゆっくりと読んでいたが、遂に最後の章になっていた。読み終えた後、どうやって手紙を書けば良いのか。陽子は今まで避けてきたこの話題を手紙に書いた。それっきり、返事は来なくなった。相手を探したが、結局同じ学年にはそれらしい生徒は見つからず、他学年にもいなかった。ただ、探していく過程でクラスメイトと会話するようになった。陽子にとっては成長だった。


時は流れて、十五年後。陽子は図書館司書として母校に赴任してきた。司書として働いていると、たまたま例の小説を見つけた。懐かしくなり本を開くと1枚のレシート。「これからも応援してるよ」



              完
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