第1話 ふぁんた爺のルーティン
文字数 1,332文字
○東京都台東区南千住 7:30am
中堅サラリーマンの家、夢殿家の朝は忙しい。
お弁当を手渡すお母さん。
出勤するお父さん。
おーい、おーい。
冷蔵庫から何やら取り出して、二階に持っていく一郎。
ガタガタ
ふぁんた(清涼飲料水)を差し出す一郎。
しゅわわわ
湯呑みに注がれたふぁんたを呑むお爺ちゃん。
倦まず、弛まず前を向いて進む事じゃ。
そうすれば、いつか春が来て桜が咲く。
人生押さば引け、引かば押せじゃ。
一郎、おまえは今、人生に押し込まれとる。
そん時は引いとくんじゃよ。
そしたら、人生の方で引いてくる。そしたら、さっと押し込めばいい。
そして、人生に投げられたら、受身をとってまた歩き出せばいい。
要は、諦めないことじゃよ。
(ボケてるが、柔道五段のお爺ちゃん)
...それから、30年後...
○ロボットベンチャー企業【夢殿】社長室
社長、社長!起きてください!3時ですよ。
今日は、祖父の命日でね。ふぁんたを毎朝呑むのが柔道五段だった祖父の日課だったんだ。
ワシは、W大が第一志望だったんだが、なかなか受からなくてね。
祖父が亡くなったその歳にようやく合格したんだ。
その時の受験番号が214番、ふぁんた爺だったんだよ。
...bbb..3時のニュースです。
...東京で開かれた柔道のシニア国際大会ojimpicにおいて、日本の柔慎太郎五段が、無差別級の決勝でロシアのプッチンプリン選手を破り、見事金メダルに輝きました...
ふぁんたを天に捧げ、一気に飲み干す一郎。
しゅわわわ