第1話
文字数 1,787文字
こいつはバカだ。
俺の忠告を聞かずにのぼせ上がって、またフラれたらしい。
ホノカとかいうその女は、初対面からいけすかなかった。
デレデレとにやけた顔のサトルが初めて家にホノカを連れて来た日、ホノカはいきなり俺を抱き上げて
「かわいい〜!」
と連呼した。
俺は悟った。こいつは「かわいい犬をかわいがっている私」が好きなヤツ。
サトルの顔を立ててしばらく我慢してやったけど、耐えられなくなってホノカの腕から飛び出して吠えてやった。
「こいつは要注意だぞ! 自分大好き女だぞ!」
って。
でものぼせたサトルにはわからなかった。
「おい、コロ。なんでそんなに鳴くんだよ。ホノカがびっくりしてるだろ?」
とか言って、二人でサトルの部屋に消えて行った。
それから数日して、ぐったりうなだれたサトルを俺は励ます羽目になった。
「だから言っただろ」
と思った。
サトルは俺の背中を撫でながら情けない顔で言う。
「コロ〜。俺の何がいけなかったんだろ……。あんなに俺のこと好き好きって言ってたのに、もう別のやつと付き合ってるよ……」
なんでわからないんだよ。だからホノカは恋してる自分が好きなんだよ。
「コロは最初からホノカのこと、気に入らないみたいだったもんな……。こうなることがわかってたのかな」
当たり前だろ。だから俺の忠告を聞けって言ってるんだ。
「俺、髪の毛伸ばしてミステリアス路線に変更してみよっかな。ミステリアスなサトルくん、なんてモテるんじゃない?」
テレビに映る人気イケメン俳優を見ながらサトルが言った。
こいつはバカだ。
お前がそんなことしたらただの不潔なむっつり野郎になるからやめとけ!
ロン毛でミステリアスなんて、よっぽど端正な顔立ちでおしゃれな男しか成り立たないんだよ!
「なんだよコロ、そっぽ向いて……。やめとけってことか?」
そうだ。悪いこと言わないからやめとけ。
「ツンデレってのにも、女子は弱いらしいよ」
サトルが言った。
お前にそんな高等技術、できるわけないだろう……。
あぁ……。こいつは自分の魅力がわかっていない。
素朴で素直なのがお前の良さだろう?
しばらくの間、うじうじと落ち込んでいたサトルは、若さで回復してそのうち元気になった。
そしてまた恋をしたようだ。
今度はどんな相手だろう。
しっかり品定めしてやらないと。
その子はカオリといった。
ホノカの時のようなにやけ顔ではなく、なんだかちょっと誇らしげなサトルがカオリを家に連れて来た。
さて、どんな女かな。
見定めようと玄関に出た俺を見てカオリは言った。
「あ、初めまして、コロさん」
少し膝をかがめて。
不用意に距離を詰めて来たりしない。
しかも、さん付け。
そうだ。高校生のお前たちなんかより、俺はとっくに年上になっているんだ。それをあたかも縫いぐるみを扱うように接する輩 は信用ならん。
ぬぬ……。
カオリ、なかなかやるヤツかもしれん。
ホノカの時はそそくさと自分の部屋に消えて行ったくせに、今回は二人でリビングに入る。
俺もリビングで二人の様子を伺うことにした。
台所からお菓子と飲み物を持って来たサトルはカオリと一緒にソファーに座り、俺に言った。
「コロのおやつもあるからこっち来いよ」
二人から離れて様子を見ていた俺は、知らんぷりしてそのまま伏せた。
おやつは欲しかったけど、ここは我慢。初めて来た客の前で油断はできない。
カオリは特に俺を気にすることもなく、楽しそうにサトルと話している。
サトルも楽しそう。
この前の落ち込んだサトルを思い出すと、その笑顔にホッとした。
しかしお腹減ったな。
おやつ、食べたいな……。
そう思って顔を上げるとカオリと目が合った。
「コロ、おやつ食べる?」
カオリのやさしい声に、つい体が動いてしまう。
俺はカオリの膝に収まり、おやつを食べていた。
「コロはツンデレだね〜」
カオリはやさしい笑顔でサトルに言った。
そ、そうだ。
これがツンデレだ。サトル、わかったか? お前にこんな高度な真似はできないだろ?
「ただ単にカオリのこと気に入ったんじゃないの?」
笑いながらサトルが言う。
サトルの彼女として合格ってことだ!
俺はお前の幸せを願って……。
気がついたら俺はカオリに撫でられてお腹を見せて寝そべっていた。
あぁ……。
サトルに負けず劣らず、俺もバカなのかもしれない。
俺の忠告を聞かずにのぼせ上がって、またフラれたらしい。
ホノカとかいうその女は、初対面からいけすかなかった。
デレデレとにやけた顔のサトルが初めて家にホノカを連れて来た日、ホノカはいきなり俺を抱き上げて
「かわいい〜!」
と連呼した。
俺は悟った。こいつは「かわいい犬をかわいがっている私」が好きなヤツ。
サトルの顔を立ててしばらく我慢してやったけど、耐えられなくなってホノカの腕から飛び出して吠えてやった。
「こいつは要注意だぞ! 自分大好き女だぞ!」
って。
でものぼせたサトルにはわからなかった。
「おい、コロ。なんでそんなに鳴くんだよ。ホノカがびっくりしてるだろ?」
とか言って、二人でサトルの部屋に消えて行った。
それから数日して、ぐったりうなだれたサトルを俺は励ます羽目になった。
「だから言っただろ」
と思った。
サトルは俺の背中を撫でながら情けない顔で言う。
「コロ〜。俺の何がいけなかったんだろ……。あんなに俺のこと好き好きって言ってたのに、もう別のやつと付き合ってるよ……」
なんでわからないんだよ。だからホノカは恋してる自分が好きなんだよ。
「コロは最初からホノカのこと、気に入らないみたいだったもんな……。こうなることがわかってたのかな」
当たり前だろ。だから俺の忠告を聞けって言ってるんだ。
「俺、髪の毛伸ばしてミステリアス路線に変更してみよっかな。ミステリアスなサトルくん、なんてモテるんじゃない?」
テレビに映る人気イケメン俳優を見ながらサトルが言った。
こいつはバカだ。
お前がそんなことしたらただの不潔なむっつり野郎になるからやめとけ!
ロン毛でミステリアスなんて、よっぽど端正な顔立ちでおしゃれな男しか成り立たないんだよ!
「なんだよコロ、そっぽ向いて……。やめとけってことか?」
そうだ。悪いこと言わないからやめとけ。
「ツンデレってのにも、女子は弱いらしいよ」
サトルが言った。
お前にそんな高等技術、できるわけないだろう……。
あぁ……。こいつは自分の魅力がわかっていない。
素朴で素直なのがお前の良さだろう?
しばらくの間、うじうじと落ち込んでいたサトルは、若さで回復してそのうち元気になった。
そしてまた恋をしたようだ。
今度はどんな相手だろう。
しっかり品定めしてやらないと。
その子はカオリといった。
ホノカの時のようなにやけ顔ではなく、なんだかちょっと誇らしげなサトルがカオリを家に連れて来た。
さて、どんな女かな。
見定めようと玄関に出た俺を見てカオリは言った。
「あ、初めまして、コロさん」
少し膝をかがめて。
不用意に距離を詰めて来たりしない。
しかも、さん付け。
そうだ。高校生のお前たちなんかより、俺はとっくに年上になっているんだ。それをあたかも縫いぐるみを扱うように接する
ぬぬ……。
カオリ、なかなかやるヤツかもしれん。
ホノカの時はそそくさと自分の部屋に消えて行ったくせに、今回は二人でリビングに入る。
俺もリビングで二人の様子を伺うことにした。
台所からお菓子と飲み物を持って来たサトルはカオリと一緒にソファーに座り、俺に言った。
「コロのおやつもあるからこっち来いよ」
二人から離れて様子を見ていた俺は、知らんぷりしてそのまま伏せた。
おやつは欲しかったけど、ここは我慢。初めて来た客の前で油断はできない。
カオリは特に俺を気にすることもなく、楽しそうにサトルと話している。
サトルも楽しそう。
この前の落ち込んだサトルを思い出すと、その笑顔にホッとした。
しかしお腹減ったな。
おやつ、食べたいな……。
そう思って顔を上げるとカオリと目が合った。
「コロ、おやつ食べる?」
カオリのやさしい声に、つい体が動いてしまう。
俺はカオリの膝に収まり、おやつを食べていた。
「コロはツンデレだね〜」
カオリはやさしい笑顔でサトルに言った。
そ、そうだ。
これがツンデレだ。サトル、わかったか? お前にこんな高度な真似はできないだろ?
「ただ単にカオリのこと気に入ったんじゃないの?」
笑いながらサトルが言う。
サトルの彼女として合格ってことだ!
俺はお前の幸せを願って……。
気がついたら俺はカオリに撫でられてお腹を見せて寝そべっていた。
あぁ……。
サトルに負けず劣らず、俺もバカなのかもしれない。