文字数 490文字

 彼女のお尻を追いつづけると、そこはぼくの家だった。夜だった。
 灯がついていないので、視覚的に判別できるものはすくなかったが、自分の家だから心の目で状況を把握できた。
 彼女のお尻は消えてしまったか、どこかに隠れてしまったようだった。
 また現れてくれるだろうという安心感があった。

 リビングのフロアスタンドをつけ、テレビの前にすわった。
 ぼくは小説を書きたいのだが、うまくいかない。だからアニメをみて、シンプルなストーリー・ラインを学習しようとおもっていたのだった。だからフローリングには『火垂るの墓』のDVDがスタンバイしてあった。「二度とみたくない映画」の筆頭にあげられているアニメだ。
 予想とちがって、主人公は社交性のない少年で、共感できた。
 みおわると、これもフローリングに積んであった本に手をのばした。本格的に読書しようとしたわけではないから、フロアランプだけで部屋は暗いまま。
 そうだ。これも読もうとおもっていたんだった。と手にとったのは児玉雨子の『##NAME##』。ひらいたページにおもいがけず『火垂るの墓』が出ていて目にとびこんできた。この世界にシンクロはおおい。
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