文字数 801文字

 街の中心部にある丘の上の宮殿への道は、装飾されていたが、それはどこかケバケバしく、あまり感心出来るような代物ではなかった。
「成金趣味の王様だな」
でもどうでもいい。早くこの重荷をなんとかしたい。

「思ったり大きな城だなぁ」
ようやく丘の上までくると、視界に収まり切れないほどの、薄灰色の石造りの巨大な城がそこに鎮座していた。城門には全身鎧の門番らしき者が両脇に立っていたが、まるで生気の無い。空の鎧の置物のようだった。
「ど、どうも」
鎧に軽く会釈をすると大きな門はゆっくりと開いた。
「入っていんだよな」

 城の中には案内人一人もいないようだが、とりあえず、真ん中の太い廊下をまっすぐにすすんだ。扉を開け、また次の扉を勝手に開けていく。
「いつまで続くんだ?」
6つほど扉を開けた時に、玉座の間らしきところに入った。脇には再び鎧が並び、薄暗い部屋を松明が灯す。
「ほんとゲームみたいだ」

 歩を進めると巨大な玉座が見えてきた。さらに進む。そこには豪奢な玉座に、金の刺繍の入った分厚いコートを着た、薄暗い顔をした老人が座っていた。まるで、金の玉座に埋もれた木炭のようだった。
あ、あの
「また土くれが、灰になりに来たか」
こちらが何かを言う前に、乾いた声が城全体に響き渡った。弱々しい細い声であるはずなのに、城が唸るかのような、巨大な声でもあった。今まで聞いたことのないような矛盾を抱えた奇妙な音に、頭と耳が一瞬、変になったかと動揺する。
あ、あの
「もっていけ」
何も言わせてくれないのか。いきなり小さな麻袋を投げられた。袋からは金貨がこぼれた。
あ、あの
「重荷のことなら気にするな。忘れろ。それで収まる。好きにしろ」
あ、あの
「では、この街で好きに暮らせ」
あ、あの
「下がれ。もう疲れた」
あ、あの
「あ、あの。あのですね。人は死んだらどうなるんですか?」
何を聞いてるんだ?俺は。
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