第80話  大熊先生。

文字数 3,256文字

 大熊先生はチャイムが鳴っても、グラウンドに来いと言う。

 渋々付いていくクラスのみんなに遅れて、僕と赤木もその後を追った。

ここでいいか。よ~し。みんなはここであの二人を見ておけ

【堀口】

こ、こんな事したらダメだと思います!

【魚住】

先生がこんな事していいのかよ! 問題になるぞ!

確かに問題になるだろうな。先生もクビになるかもしれんが……

これはとても大事なことなんだ。


 先生は腕組みをして僕達を見ている。


 これが大事な事になるだと? 何が? 
 何の為になるっていうんだ! みんなの前でケンカして……ただの晒し者じゃないか!

赤木。黒澤。さっさと始めろ。ケンカしたいんだろう?

【赤木】

俺はケンカしたいんじゃない! こいつがムカつくんだよ!

ならさっさと殴ればいいじゃないか

【赤木】

くそっ! くっそぉ!

 完全にキレた赤木が向かってくると、僕も全力で対抗した。

 みんなが見てる中で、叫び声をあげながら、必死に殴る蹴るを繰り返した。

先生! こんなのひどすぎます!

 坂田さんに賛同するクラスのみんな。

 だけど先生は何もせず、ただ僕と赤木がケンカしてるのを見ているだけだった。

黒澤。お前は何でケンカするんだ? 赤木にいじめられるからか?

そうに決まってるじゃないか! 

こいつらが……こいつらが! 僕を寄ってたかって、いじめるんだ!

 なんだこの先生は。
 僕にこんな惨めな思いをさせて……
 
 そう思うと、僕はケンカの最中にも関わらず、泣き出してしまった。

 それでも赤木の顔が目に入るなり、向かっていった。

何が悪いんだ。何で……何で? 何で僕達ばかりいじめるんだ! 何も悪くない。何も……
 その時、ふと楓蓮お姉ちゃんの事を思い出すと、お父さんと抱き合って泣いているシーンを思い出していた。
お姉ちゃん……

 僕の手が完全に止まると、電池が切れたみたいに倒れこんでいた。

 すると大熊先生が僕の身体を起こすと、抱きかかえてくれる。

僕はいじめられるのが嫌なんじゃない。

僕は……お姉ちゃんが怖い顔するのが嫌なんだ。


いつもいつもいじめられる僕を助けに来てくれて、仕返ししてくれて、だけど……一番つらいのはお姉ちゃんなのに……いつもはとっても優しいお姉ちゃんなのに!


僕のせいで……つ、つらい思いを……うぅ……うわぁ~~!

先生は抱きかかえたまま、暫くして「全部吐き出せ」と言う。だから僕は止まらなかった。 

僕がいじめられると、お姉ちゃんが怒って仕返しに行くんだ!

だけど……つらい目に逢うのはいつもお姉ちゃんなんだ。


だから僕は……いじめられちゃいけない!

 この辺りは僕もあんまり覚えてなくって、これまでのつらい出来事を叫びまわっていた。先生がもういいと言うまで、僕は広い運動場に声を上げ続けた。


 大熊先生はそのあと、小さな声で「よくやった」と言ってくれた。全然意味が分からなかったけども、その後で「もう黒澤はいじめられる事はないぞ」と言うのだった。

 ※


 誰も何も喋らないまま教室に戻る。
 各々が席に座ると、さっきのケンカの意味を教えてくれる。


 さっき僕が言った事に対して先生は、素晴らしい勇気だと褒めてくれた。

 だけど僕は恥をかいたとしか思えない。



 学校でこんな恥ずかしい思いをしたのなら、友達はおろか、誰も喋ってくれないに決まってる。

 お姉ちゃんの事ばっかり叫んじゃったし、友達が欲しいとか、上手く喋れないとか、散々言ってしまったから。

みんなに質問だ。この話を聞いて、黒澤をいじめてやろうと思うヤツはいるか? 手をあげろ

 先生が目の前にいるのに……誰も上げる訳が無い。そう思った。

 

じゃあ、この話を面白いとか、バカにする奴はいるか?

そんな奴は先生が絶対に許さんぞ!

 急に怒り出した先生は、教壇を思いっきり平手すると、クラスのみんなが凄く驚いていた。目の前にいる僕もそうだし、赤木なんかお尻が浮いてた。

黒澤はな……本音でみんなに喋ったんだ。つらい事、悲しい事。そういう話は決して笑ってはいけないし、聞いたこちら側も本気で受け取るべきだ。


黒澤のつらかった思いを、お前達も同じように考え、理解し、同じように悲しむべきなんだ

 みんなが僕のつらかった思い出を……一緒になって悲しむ?
なぁ黒澤。恥ずかしいか? 全部喋って……本気でみんなに喋ってどうだった? だけどな。これは全然恥ずかしい話じゃないんだ。むしろ凄い事なんだぞ
 凄いこと?

お前の声はみんなに届いた。もう黒澤は……いじめられたりしないし、きっと友達も出来る。

それと……楽しい学校生活にするんだろう? きっとそうなる。先生が断言する

 その時、椅子が動く音がすると、堀口さんの声が聞こえてきた。

【堀口】

黒澤君。ごめんなさい。いじめられてるのを知ってて何も言わなくて……

もっと早く……

え? そんな堀口さん……それは堀口さんが悪くないよ。そんなの……

 どうしたの? 急に謝るなんて、それに僕は何も思ってない。

 坂田さんと同じく、僕をいっぱい助けてくれたのに……

堀口。もっと詳しく喋れ

【堀口】

席替えがあって、黒澤君と離れて……いじめられてるのを見て……

怖くなって、み、見て見ぬふりして

そんな。ほ、堀口さんは悪くないよ!
 僕は慌てて堀口さんの味方をしたけど、大熊先生はこんなことを言う。

黒澤の本音が堀口にも届いたんだ。なら堀口だってお前に本音で喋らないといけない。


その時。どう思い、そうなってしまったのかを。

堀口も、お前に……分かってもらいたいんだ。


黒澤は、気にはしていないかも知れない。

だが堀口にとっては……とても大事な問題なんだ。


どうにかしようと思った。だけど出来なかった。

やろうと思ったんだけど、出来なかった。それを黒澤に……分かってほしいんだよ。

【堀口】

坂田さんが黒澤くんを助けようとして、それをみて私も……


堀口さん……ううん。堀口さんだって、先生を呼びに言ったり……ありがとう。

【堀口】

ごめんなさい。黒澤君

よし。堀口。それでいいんだ。黒澤に言えなかったことを話せて、すっきりしただろう? 

黒澤。許してやってくれ

……はい。

だけど僕は、堀口さんに対して何も思ってないし、全然平気だから……

それよりもいっぱい助けてくれたり、話しかけてくれたり……感謝するのは僕の方だよ。


 僕はそもそも。堀口さんには何も思ってなかった。

 イジメられているのを止めれば、堀口さんだって狙われるかもしれないし、しょうがないよ。


 だけど、堀口さんは……僕の事。そんな風に思ってたんだ。

私も黒澤君いじめられてるのに……知ってたのに、ごめんなさい。
ごめん黒澤。俺はみんなに紛れて……お前を叩いた。
 クラスの。み、みんなが……
 
 堀口さんの後で次々と僕に対して謝り出したんだ。
 あまりにも恥ずかしくなって、僕は後ろを向いて「もういいよ」と訴えたけど、全然止まってくれない。

みんなもういい。黒澤はみんなを許してくれるそうだ。

優しい奴でよかったな。

 先生がいう事で、やっと止まってくれた。

本音で打ち明ければ、みんなも本音を出すしかない。

普段なら絶対出せない気持ち。それをみんなに示した黒澤は、一番勇気のあるヤツだ。先生はそう思うぞ

 こんな風に言われるのは初めてだった。今まで、こんな事誰にも喋らなかった。
 それ以前に喋る事が出来なかった僕が、普通に喋っている事に驚いていた。
さぁ。黒澤の話は終わりだ。次は……赤木。魚住。名谷。お前達の話をしようか

 さっきまで下を向いていた三人。
 先生に名だしされて更にビビってる。


 僕をいじめた三人がどんな風に言われるのか、僕は勝った気でいたんだ。

 だけどそれは……全然間違いだった。

みんなに質問だ。赤木。魚住。名谷。この三人は悪いと思うか? 

悪いと思うヤツは絶対に許さんぞ!

 これには僕も赤木達も、クラスのみんなも驚きを通り越した。


 僕をいじめた三人組。どう考えても一番悪いはずなのに……

なぜなら俺が受け持ったクラスの子供達に。悪い生徒などいないからだ
 思わず赤木達と目が合ってしまったけど、みんな何も言えなかった。
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登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

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