狂夢

文字数 993文字

 アートとは偏に、全て人間生活の中で触れた、他者による発想の具現化の模倣であると、私は考えます。
 アートとは、“総て”の人間行為を包容する言葉であると、私は考えます。
 然しも、あの軍服男と、イモどもは、此れをアートだともでも云いたげのようです……。世界の巨匠が表現として用いた手法を、何の捻りもなく真似ただけ……それに価値がありましょうか?否、塵でしょう。
 そもそもキューブリックが表現したものと、彼らのしてる陰臭い真似事は、天と地ほどの差があります。
 それを語るには……凡そ時間が足りないでしょうから……私は独り、独房で夜を明かすのです。今に思えば、彼の軍服はハートマン軍曹のマネなのでしょうか?だとしたら滑稽です……。

 “ゴディバ”婦人の淫乱踊り……ファンダンゴを踊るスカラムーシュ……“悪魔崇拝者”のベルゼブブ……熱を発するミスターファーレンハイト…………。

 死に忘れた男どもは、街行く娼婦に似た女どもに、芸を売る。
 いつしかの尊敬の念を忘れ、敵国に股を開く女ども。
 手足の欠けた、男たち。

 目覚めれば、空は独房の天井でしょうが、如何にも、青空でした。
 境界性の無い、悪夢の果て。意識的に感じ取ることで、私は独房の天井を視認することができましたが、僅かな気の逸れで、再び歪みが生まれます。

 社会への怒りだったりに、私は馴染めませんでした。大学生らは、社会のバックスタッバーとして、それを嗜むのでしょうが、私にはそれができませんでした。酒や煙草を嗜むように、皆が其れらを享受するのに、私は何と愚かだったのでしょうか……。

 腐った靴底に張り付く、もう一人の自分。
 鏡に映る、別の誰か。
 地獄の底から私を睨む、何か。

 全てが真似事なのです。

 全てに狂っています。狂うと云うならば、何れ程のものか。微笑みデブ、あれに似た“狂い”でしょうか?来る日には他者にぶつけようと狂気を孕んでいても、何れ身を滅ぼすだけ。本当にそうでしょうか?
 
 人は何故争うのでしょうか、マザーテレサよ。
 人々は、愚かな偶像を指導者だと誤認して、崇め奉り、無限の闇の先に見える微かな光に手を伸ばし続けます。その光が、人々の網膜を焼き切るまで、争いは続くのでしょうか……。

「…………………」

 シュルレアリスムに支配された世界が、あったとして。幾何学的な空の下、私が生を受けたとして。何であっても、風は吹くのです。

 





 
 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み