第1話

文字数 1,326文字

2024年1月4日。
私は古い家の一室にいた。
部屋には私と有名な霊能者、そしてその秘書がいた。
白い壁にひび割れとひび割れの中央に、指で開けた穴があった。
ちょうど障子に指で開けた穴のような。
霊能者はそれを見ると、私に振り返って「こういうの、お嬢様に多いんだよね」と言った。
他にも事例があるらしく、話をしていたがよくわからなかった。
すると、ふいに玄関からガラガラガラと音がした。
ガラス戸を開ける音だろう。
私は母が帰ってきたのだと直感し、玄関のほうを見てみる。
だが、玄関が開いている様子もなければ、母がいる気配もない。
私は秘書と「怖い怖い!」と騒ぎ、霊能者に何かが来たのではないかと尋ねようとした。
しかし次の瞬間、玄関の死角から母が現れた。
おかしなことが起こったわけではないのだと、ほっと胸を撫でおろす。
私のいる部屋には箪笥がある。
上のほうは引き出しになっているが、下のほうだけ開き戸になっている。
その開き戸が開いていて、中には鳥の剥製があった。
赤と黒の鳥。
大小ひとつずつある。
確か身内からもらったものなのだが、私は剥製の類が好きではない。
そのため、売ってお金にでもしようと思っていた。
剥製なら高く売れるかもしれないとも思っていた。
ただ、霊能者がその剥製をじっと見ている。
「その剥製、どうしようかと思っているんですけど」と声をかけると、霊能者は「覚えてないの?」と尋ねてきた。
なんでも私の前世は蟻で、この剥製になった鳥とは友達だったらしい。
私が猫に襲われそうになっているところをこの鳥が助けてくれたのだとか。
その話を聞いて、私は号泣してしまった。
気づいたときには、鳥の剥製がまるで車輪がついているかのように畳の上をすーっと動き回っていった。
「飾っておいたほうがいいんですか?」
「そうだね」
号泣しながらも、これを飾らなければいけないのかと少し複雑な気持ちだった。
その後、部屋でお祓いらしい儀式をしたが、秘書は退屈そうに寝転んで、寝ぼけ半分でスマートフォンをいじっていた。
儀式の最中、熊本らしい田園風景が浮かび上がってきた。
神様なのかはわからないが、誰かの声が聞こえてくる。
「梅干しは塩が多すぎてもいけない。今安心して食べられるのは湯葉だけだ」
そんなことを言っていたような気がする。
儀式が終わると霊能者のスマートフォンに電話がかかってきて、何かしらの要請があったらしい。
相手はアイドルらしかった。
おそらく同じようにお祓いをするのだろう。
そんなことを考えていると、部屋に老人が入ってきた。
広い額に、伸びきった白髪は少しウェーブがかっていた。
鼻は大きめで、髭も仙人のように伸びていた。
グレーのスウェットの上下。
老人が霊能者に自分は困っているんだというようなことを訴えると、霊能者は「あなたの場合には精神疾患があるから病院に行ったほうがいい」とだけ言って去っていった。
霊能者が去った後、老人は私の目の前に来て「あなたとセックスがしたい」と言った。
下手に刺激をしてはいけないと、「いろいろと問題がありますから」とやんわりと断った。
誰だかわからないが、誰かが突然出てきて、ゴムが1つにつき1200円だか1500円だかすると言っていた。
結局、私はその老人と行為をせずに済んだ。
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