第3話

文字数 986文字

私と母、叔父と祖父の4人で歩いている。
気まずいが極端に気まずいわけではない。
青い扉や緑の扉を開けて進んでいると突然、祖父が倒れた。
医者でもある叔父はすぐに心臓マッサージを始める。
私は慌てて救急車を呼ぼうとするのだが、携帯電話の番号をうまく押せない。
「155」「159」などになってしまって、なぜか電話口からは時報が聞こえる。
電柱を見るとどこかの有名なホテル前らしい住所が書いてあり、これを伝えればすぐに救急車が来てくれると思っているのに救急車を一向に呼ぶことができない。
そのうち、祖父が回復しており、叔父が「救急車は呼ばなくていい」と言った。

私たち4人は曰く付きらしい建物にやってきていた。
古ぼけた窓からベンチが見えて、写真に収めるととてもいい具合だ。
写真を撮って、さらに奥へと進んでいくと昔の電話ボックスのように仕切られた場所があり、その中に黒いドレスを着た女性の後ろ姿が見えた。
あれは見ちゃいけないものだと私は叔父と一緒に逃げ出した。

気づけば、私はまったく知らない女性4人ほどと行動を共にしていた。
「死にたいので人生を終わらせましょう」という話で、私も人生を終わらせることになっていた。
首には注連縄のようなものがかかっていた。
ただ、どのような方法で人生を終わらせるのか、その点についての案内がない。
すると、私はいつの間にかどこかの教室らしい場所にいて、4人のうちの1人の女性の身の上話のようなものを聞かされていた。
彼女は過去に水商売をしていたらしく、「顔は美人だったんだけどねぇ……」と当時の関係者、誰かの声が入ってくる。
私の斜め後ろのおばさんが焼き芋を食べながら「こういうの萎えるわ~」と独り言ちる。
ふいに「○○さん」と私の名前が呼ばれた。
返事をすると、私はどうやらこの教室にいる全員の前で「なぜ人生を終わらせたいのか」と発表することになっていたらしい。
教室の後ろのほうには授業参観であるかのように、母が椅子に座ってこちらを見ている。
私はぽつぽつと話し出した。
「私は昔からなぜ生きているのだろうと、なぜ生きているのかがわかりませんでした。生きていたくないというか。つらいことや悲しいことがあるとすぐに死にたくなります。でも……親の顔を見て、これが根本的な解決にならないことはわかっているのですが、とりあえず死ぬのはやめておこうと思います」
話し終えた私は号泣していた。
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