第64話  守る側の人間 3

エピソード文字数 2,519文字

 ※ 


 とりあえず場所を変える為に歩き出す二人。その間にも魔樹は今回のストーカー行為の動機や理由を話してくれた。


 まぁ別に、動機は説明してくれなくてもいい。

 

 こいつの事だ。きっと白竹さんに言われて、俺を護衛してやって欲しいとでも言われたのだろう。


 喫茶店の帰りでも滅茶苦茶心配してたからな。


 それならそれで、俺が紫苑さんと帰る時に一緒に付いてくればいいだけの話だろ? 何で尾行するような真似をしたんだよ、ったく。

ここで話そっか
分かりました

 家の近所にある大きい公園に入っていくと、屋根付きのベンチに二人が座ると、ここでも魔樹は「すみませんでした」と謝る。


 もういいってばマジで。



 まず魔樹が説明してくれたのは、なぜ俺を尾行という行動に出たのか。だった。

美優が言うには……そのまま楓蓮さんに「送ります」と言っても聞き入れてくれない。

そう思ったから、僕が……

 ああっ。そりゃそうだ。

 これはお前が正解だな。などと思っていると……


 あれ? そういえば。今の魔樹はクールタイプじゃないか。とか今更気が付いてしまった。


 喫茶店ではクネクネしてたハズなのに、瞬時に切り替わっちまったな。


 もしかして。クネクネするのは喫茶店だけの限定キャラとかじゃねーだろうな? ほら。ここは一応外だし。

あと、楓蓮さん。聞いて下さい
 マジ顔になってしまった魔樹は、やたら顔を近づけてくる。
……あの竜王さん。本当に楓蓮さんを尾行していました
 なんだと? お前も見たのか?

彼女は危ない。それは僕の友人からも聞いていましたけど、正直半信半疑だったんです。


でも……ここにきて確信しました。

 その友人は俺の事だろ? 半信半疑だったのかよ。

 まぁ、もっとも。俺も信じてなかったけど。

竜王さんがあなたを尾行しているのが分かると、僕は彼女に照準を変えました。

楓蓮さんが紫苑さんの家まで行ったあとも、じっと待ってましたし。


本気でヤバいって思って……

 だから尾行されているのが複数に感じたのか。

なるほどね。大体分かったから。もういいってば

そんな落ち込まないで

 さっきから魔樹は下を向いたまま目を合わそうとしない。

 まだ俺に対して「悪いことをした」と思っているのだろう。

ありがとう。心配してくれて
 ようやくちらっと俺の顔を見てくれたか。
でも……私には、護衛とか必要ありません
 やんわりと本音を伝えると、俺は立ち上がった。
しかし……楓蓮さんに何かあっては……

 まぁお前のことだ。食い下がってくるよな。

 だけど、これは分かってもらわなくちゃ困るんだ。



 そもそも俺は「守られる」人間じゃない。

 守る側の人間だから。

  

悪いけど魔樹くん。私はあなたよりも強い

 こいつを説得する為だ。少しだけ技を披露してやる。 


 

 俺は魔樹の前で腰を据えて構えると、デモンストレーションのような突きや蹴りを見せた後に、大技に入る。


 ついでに。お前が得意なソバットよりも高く飛んでやった。

   

 そこまで見せると、魔樹の顔色を伺う。


嘘でしょ? あの楓蓮さんが……

素早い身のこなしに、とんでもない跳躍力。素人じゃないのは一目瞭然。


でも……あなたは女性。男である私が守ろうとするのは当たり前。

 当然驚いた顔をしていたが、まだ納得しきれない。そんな面してやがる。


 しょうがないな。ちょっと挑発してやるか。

そんな自信があるのなら、私とやってみる?


いっておくけど。その辺の男が束になって掛かってきても、私は勝てる自信がある

 こうやって魔樹を挑発するのは、俺に護衛は必要無いというアピールだ。



 楓蓮ちゃんは素直に守られる性格じゃないって事を分かってもらわねーと、またお前にストーカーされるかもしれないだろ?


 

 どうせなら見せつける機会があればいいんだが。それが一番手っ取り早いのに。

尾行されているのは分かってた。だから私はまず紫苑さんを送り届けた。

そして逆に捕まえようとしてたんだけど。捕まえたのが魔樹くんでビックリしたけどね

尾行に気づいてて、先に紫苑さんを安全に送り届けて……

楓蓮さん。あなたという人は……


 だんまりモードに入った魔樹に更に続ける。
本当はね、喫茶店で美優ちゃんに聞いてから……そんな危ない人なのなら、私に注意を向けて、懲らしめてやろうと思ってた
あっ! そ、それで……

 ん? どした魔樹?

 

 俺が疑念の目を向けるなり、はっと目開いた魔樹は、こんな事を言いやがる。

美、美優も同じだったんです。

楓蓮さんに危害が及ばないように彼女に積極的に話しかけて、気をひこうと……

 あっ……


 そういう事か! だから喫茶店で愛想よくする俺を……竜王さんから引き離したのは、そういう理由だったのか。

ふふっ。美優ちゃんと同じ事を考えてたんですね
楓蓮さんも私と同じ事を考えてたなんて……

 泣けてくるぜ。

 双方が竜王さんの気を引こうとしてたとは。



 ってか魔樹よ。

 お前は厨房の中でクネクネしながら、よ~く見てたよな。

大体分かりました。とりあえず彼女の件は……私と魔樹くんでどうにか解決しましょう
……っはい!
美優ちゃんや紫苑さんが狙われないようにしないと。彼女達は私達が守らないといけない

 そこまで言うと、魔樹は再び頭を下げ、腹の底から搾り出すような声で、ありがとうございますと返してくれた。



 あ、ちなみに龍子さんが入ってないのは、彼女は強いだろうし、俺と同じ人種だからだ。



 今回ばかりは彼女にも伝えたほうが良さそうだな。今度喫茶店で一緒になったら話してみよう。きっと協力してくれるだろう。



 とりあえずこれくらいで良い。後は竜王さんがこれからどんな風に接触してくるのかを見定めねば。



 などと思っていると……


 どうやらそんな暇は無かったらしい。

魔樹くん。正面から来ちゃったよ

 魔樹の背後に見えた水色の髪。


 俺の視線に気がついた魔樹が振り返ると、竜王さんはこちらに手を振りながら接近してきた。



 笑顔の竜王さんは、普通に俺の前までくると、これまた普通に話しかけてくる。

あれ~? こんな夜中に公園で何してるんですか~~?

 まさかとは思うが……


 尾行してたのがバレていない。そう思ってんのか?

この子。私が尾行してるのに気づいてたはず。


何を考えてるの?

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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