旅人と奴隷の”日記の話”

文字数 3,690文字

・・・やはり食後のコーヒーは絶品だな。

ゆっくりとした空間でしかこの味は出せないだろう。

 そう言いながら旅人はコーヒーをすする。
・・・・・
浮かない顔をしているな・・・。

もしかしてコーヒー鍋の後にコーヒーを飲みたかったか?

!!!!
 私は全力で旅人の疑問を否定した。

 あれを体の中に吸収した時にあまりの得体のしれなさに意識が飛び、まるで時間が戻っているような感覚に陥ったからだ。

そうか、あのコーヒー鍋の良さが分かるのはまだまだ先だな。

苦さが分かる歳になってからでないと。

 あれは苦さを超えた得体のしれないまた別の味だろう。この星でできた食べ物ではないような気がする

 というか、

 も う 二 度 と 食 べ た く な い 。

今日はもう寝よう。

明日は日の出と共に出発だ。

 旅人はポケットから小さな本とペンを取り出し、何かを小さな本に書き始めた。
・・・・・?
ん?この本にそんなに興味があるのか?

この本は手記と言ってな、自信が体験したものや感想などを書きつづったものなんだ。

物心ついた時から毎日1ページ書いていてな。

 その手記には日記と書かれた文字の下に”36”という数字が書いてあった。 


 少し中身が気になった。

 私が出会った時、もしくは出会う前には何をしていたのだろうか?

おっと、中身を見てはいけないぞ。

他人が隠そうとしていることを悪事ならまだしも無理矢理見ようとするのは関心しない。


 心が読まれていた。

 

 だがその旅人の言葉は、私の仲の好奇心という名の獣を呼び起こすには相応しいほどの餌になった。

・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
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・・・・・
・・・・・
・・・・・コーヒー風呂に・・・入り・・・たい
・・・・・
 旅人の寝言がうるさくて寝れない。

 私は旅人の寝言を背にその場で立ち上がり、馬車の外へと飛び出していった。


 外は寒くもなく、また熱くもなく、丁度いい温度の心地よい風が吹いていた。

 天気も悪くなく、左右に揺れる草原の草を月光が照らしている。


 私は外に置かれていた組み立て式の椅子に腰を下ろす、すると目の前の簡単な作りでできているテーブルの上に何かが置かれていることに気が付いた。

!!
 そこに置かれていたのは手記だった。

 

 ・・・・・今、旅人は寝言を呟くほどにグッスリと寝ている。

 つまりこれは好機なのではないだろうか?

 

 私は迷うことなく近くのランプに明かりを付け手記を手に取り、最初の1ページを読み始めた。

〇月✖日

 ついに秋の季節がやってきた。

 この時期の馬車での移動は寒がりの僕にとっては毎年辛く、全身に冷えた風が当たり体の芯まで凍えるので好きではない。

 だからといって俺は夏が好きなわけでもない、水分をいつもより多く取らないといけないし、食べ物も腐りやすくなるからだ。

 春がずっと続いてほしいと心から願う。


・・・・・
 ・・・・・特に秘密も何もなさそうな普通の日記だ。

 

 とりあえずできるだけ今日に近い場所から読み始めようとページをめくる。

〇月✖日

 町で乞食をしていた少女を拾った。

 最初は俺のことを警戒していたようだが、服や飯や風呂に入れさせるとすっかり機嫌も良くなって今は馬車の中で毛布にくるまって寝ている。

 最近この国では王政が混乱しており経済が上手くいっておらず、その波に飲まれて失業する人々も多くはなかった。

 最初出会った時に、いや、今もだが宝石がぶら下がったネックレスを右手でずっと握りしめていた。売却せずに大切にしているあたり形見か何かなのだろう。

 この経済の波は商売をしている僕にとっては悪いものであるが、同時にいいことでもある。これからここに来れば沢山手に入るからな。

・・・・・
 私より前に他の子が旅人と一緒にいたなんて初耳だ。

 だがそれよりも気になることがある。この”これからここに来れば沢山手に入る”というのは何のことなのだろうか?そして少女は私に会う前に一体どこへ行ってしまったのだろうか?

 

 そんなことを考えながら私はページを適当にめくる。

〇月✖日

 少女の様子は初めて出会った時よりも良くなっていた。

 ちゃんと目を見てよく話し、善と悪の区別がしっかりしているとてもいい子だ。

 元は宝石店の娘だったらしく、計算や読み書きができるのはそこで教わったからだそうだ。

 両親はとても優しい人だったそうだ。だけどそんな両親も、最近の国の経済で店が上手くいかず、引っ越しをしようと隣の国へと移動していた最中に山賊に見つかってしまったらしい。

 幸い両親が囮となり少女は助かり、歩いてそのまま元居た町まで歩いて移動し、そこで偶然俺と会ったらしい。

 それは不幸なのか、それとも会えるのだから幸せなのだろうか?

・・・・・?
 別に読めない文字ではない、意味が分からない文字列をしているわけでもない。

 だけど・・・この違和感は何なんだろうか?

 

 そんなことを考えながら私はページを適当にめくろうとする・・・が、なぜかそのページだけはのりでも貼られたかのようにぴったりとくっついていた。

 隙間に爪をねじ込む、すると敗れそうな音と共にゆっくりと隙間が空いていく。


 丁寧に、なおかつ破れないように開いたページに映っていたのは、真っ赤に彩られ萎れて曲がり、インクが滲んだ光景だった。

月✖

 少女殺しべた

 買ってきてあげた絵本を読んでいる間にと足を縛って身動きを取れなくしたまま食べやすい、または用途別に切り分けた

 まず上半身半身を分して足腕を胴体から切り離し、お尻の肉をそぎおと。腕と食料用、下半身は性欲を解消するために、やわかいお尻のはステーキためだ。

 少女は最初は泣きめいていた。まあ、命の恩人がいきなり殺そうとしてくるのだから当たり前だろう。

 けどその鳴声は分断すれば分断するど死にかけの蝉のように掠れていく。いつ死んだかはらなが、下身を堪能した時には死いたら意識は結構持ってたのろう。天国で両親と会えてい祈る。

 脳みと目玉はくりぬいて漬けにておき、残った頭はの毛は毛布のにし、肉片は用に

 しゃれこうべには次の花うかえ中だ。費を抑えができるいつもら買高いもいいかいな。

 明日町の花屋に言ってみう。

 

!?
 この手記の内容はなんだろうか?

 体と手の震えが止まらない、足腰が震えると同時に眩暈が起きる。

 これは本物の・・・なのだろうか?いや、まずこれは事実なのだろうか??だが服やご馳走や風呂も全てしてくれたるまりこれは旅人本人日記帳???


 私 も 生 き た ま ま     に さ れ る ・ ・ ・ ?

こんな遅くまで何やってるんだ?

明日は早いんだぞ?

!!!!!
 逃 げ る 暇 な く 本 人 の 登 場 で あ る 。
おいおいそれを勝手に触ったのか・・・ってお前なんでそんなに震えてるんだ?

ん?これは・・・開かなかったページか?

 旅人は私が持っていた手記を奪い取ると、真っ赤に染まったページをまじまじと見つめた。

 

 初めは普段通りの表情だったが、時間が経てた経つほど気分がわるそうな表情に変わっていった。

・・・・・寝る前に嫌なものを見てしまったな。

お前が勝手にこのページを開いたからだぞ、どうしてくれる。

 奪ったのはそっちなんだけど。

 

 旅人は馬車から取り出した麻袋の中に手記を放り込み、口元を縄で力いっぱいに絞めた。

これはお前と出会う数日前に森の中で野垂れ死んでいた死体から拾ったものでな、足や体の一部が大きな口で食いちぎられた跡があったから魔獣に襲われて死んだんだろう。

無人の馬車も近くにあった。

馬車の中には小さなしゃれこうべに土が入れられて花が育てられていたりもしたが、今思えばあの馬車の中は・・・・・。

 旅人はそこまで言ってから下を向いて黙った。


 しかし、旅人は死体から何故そんな物を拾ったのだろうか?金や用途が分かるものならまだしも人の手記なんて・・・鈍器に使うとか?

・・・・・?
その目はなぜこんなものを持っているのかという疑問の目だな?

知り合いに他人の日記を集めている変人がいるんだよ。

不思議なことに、かなりの高値で買ってくれるからな。

 じゃあ・・・その手記は旅人のじゃなかったんだ。


 私は緊張感から解放された反動でその場に座り込んだ。

 足や腕に力が入らない。ああ・・・本当によかった。

・・・まさかとは思うがこの日記を書いていたのは僕だと勘違いしたんじゃないだろうな??
 図星だ。
・・・今度僕の所有物を勝手に触ったら晩御飯抜きだからな。
 旅人は疲れた表情でそう言いながら馬車の中に入ろうとしたが、突然動きを止めて下を向きながら小さい声で何かを呟いた。
人の秘密にはあまり足を踏み入れないほうがいい。
・・・・・?
・・・明日は早いからさっさと寝るぞ。
 旅人は止めていた体を動かして馬車の中へと入っていく。


 私は旅人が馬車に乗る前に発した言葉を聞きとれなかった。

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登場人物紹介

旅人

商売をしながら様々な場所を旅している旅人。

同時に二つのことをできないので奴隷に手伝ってもらおうと考え、奴隷市場に行きそこで奴隷と出会った。

奴隷

文字も読めるし言葉も理解できるが無口で人と話そうとせず、表情もあまり変わらない。

体に火傷の跡がある。

三年前に森の中で彷徨っているのを発見されて奴隷となり、販売されているところ旅人と出会う。

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