第4話 出撃の時

文字数 1,780文字

 アナハイム用のパイロットスーツを着たセイヤはセレスティアルガンダムに搭乗していた。

 換装が間に合わずセイヤは仕方なく無線を通し謎の人物の声に聴き入っていた。

 なんでもセレスティアルガンダムにはインタラクトシステムが内蔵されているのだとか。

 詳しい話を聞けば聞くほどにインタラクトシステムがいかに厄介なのか分かった。

 敵に対し憎しみを持てば性能にリミッターが掛かり尚且つインタラクトシステムに認められれば真の力を得られるのだとか。

 それに対しセイヤはつまらない授業を聞いているように相手をしていた。

 さっさと終わらせたいと気持ちを逸らせセイヤに気長でいるという発想はなかった。

 もう既に戦場と化していることにセイヤは気付いていなかった。下手をすれば戦争にもなり得る事態だった。

 セイヤの考えはそれにしてはスケールが小さいと思っており自身に降りかかる呪いもそれ相応だと思っていた。

 覚悟を決めたとはいえ自分の思考を超えた出来事なんてありえないとも捉えていた。

 こんな様子のセイヤは無事にフォンブラウンへ帰れるのだろうか。

『換装が終わったようだな。……いいか。イーサリアルガンダムと合流しなんとしてでもこの窮地から脱しその先にいるエンピリアルガンダムを捕獲及び破壊しろ。これは遊びではない。命を懸けた指令だ。分かったな? セイヤ君』

 謎の人物はもう既に事の重大さに気付いているようだった。それなのにセイヤは相変わらず素っ気ない態度でいた。

 セレスティアルガンダムの換装が終わり後はイーサリアルガンダムと合流するだけだった。

 どうしてここに連邦がいるのかがセイヤには分からない。一方の謎の人物はそれすらも知っていそうだった。

『あの! こちら。オペレーター。出撃どうぞ』

 女性のオペレーターが無線に割り込んできた。声からして若かったがセイヤよりは年上だった。

 セイヤは気にする素振りを見せないでカタパルトデッキにセレスティアルガンダムを移動させた。

 既に外が戦場であるなんてそんな緊張感はなかった。あったのは碌でなしの大人への反感だけだった。

 そんなセイヤは出撃する際の衝撃に耐えようとセレスティアルガンダムの体勢を整えた。

『こちら。セレスティアルガンダム。出ます!』

 遂にこの時がきた。セレスティアルガンダムは急速に前に押し進まされ気付いた時には宙の中にいた。

 これが宇宙だとか感動はなくこれといって印象深いこともなかった。いつも見慣れた光景が広がっているようにしか感じられなかった。

 出撃したセレスティアルガンダムの頭部を左右に振りイーサリアルガンダムの位置を確認した。

『あは。きたね。セイヤ』

 この時のアリッサは喧嘩を気にする素振りを見せなかった。あの時はあの時だと割り切っているようだった。

 イーサリアルガンダムがセレスティアルガンダムの隣を取った。

『……アリッサさん。俺は謝りません! この醜い争いが終わるまでは』

 他人によっては逃げているように感じ取るのかも知れない。でもそれでもセイヤはセイヤなりに責任を感じていた。

『他人がどんなにセイヤを攻めても私はセイヤのこと……信じるよ。だってそれが家族でしょう?』

 既にアリッサはセイヤを家族として見ていた。家族と離れ離れで暮らすことになったアリッサだからこその答えだった。

『家族――』

 余りに突拍子のない言葉に息が詰まる。確かにセイヤの親ですら不在の時が多かった。哀しみを押し殺す自分が嫌いだった。

『うん。ようこそ。アリッサファミリーへ。セイヤ。……頼りにしているよ』

 アリッサの言葉はまるで広大無辺な宇宙の中で光る星が瞬いてここにいるよと報せてくれたような感じがした。

 この時のセイヤは黙って理解することで精一杯だった。

『行こう! セイヤ! 先頭は私に任せて!』

 セイヤは素人なので先頭をアリッサに任せるしかなかった。まだ戦闘は始まっておらず出合うまでは分からなかった。

 敵は本星ではないものの強力な艦隊を率いる連邦だ。果たしてセイヤ達は連邦の脅威に立ち向かい突破出来るのだろうか。

『行きましょう。戦場へ』

 二機が見つめる先に連邦の艦隊があった。このまま横槍などがなければ一直線に連邦と対峙することになる。

 覚悟を決めた二人はそれぞれのガンダムを連邦のいる最前線に向かわせた。そこで二人はどうなるのだろうか。
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