第3話 抗戦宣言

文字数 2,062文字

 なんとか増援と合流し戦艦内部に逃げ込めた。

 セレスティアルガンダムのハッチが開きセイヤが落ち着いて出ると周りが驚いていた。

 セイヤ自身はこれが大人ならここまでの反応はなかっただろうと感じていた。

 まるでガンダムがセイヤを連れてきたように周りの大人は思っていた。

 羨望の眼差しにセイヤは艦内にいるはずのアリッサを捜した。助けてくれたお礼を言いたかった。

 その後の艦内は忙しくセレスティアルガンダムは即時に回収された。

 この事態にセイヤはなんとも思わなかったが待遇は気になるところだった。

 手荒い待遇はないことを確認するとデッキの鉄棒を蹴り艦内の床に足をつけた。

「あ! 待ってよ!」

 どこからか聞いたことのある声がしてきた。セイヤが捜すと視界に女性が映り込んだ。

 この時のセイヤはもしかしてアリッサさん? と思いを馳せていた。

 セイヤが振り向くと同時に女性は握手出来る距離で立ち止まった。

「うん! 絶対に君がセイヤ君でしょ?」

 連想させるたびに目の前の女性がアリッサさんに見えた。訊いても失礼ではないと感じ確認しようとした。

「その声は……アリッサさん?」

 セイヤの前にいる女性はパイロットスーツ姿でバイザーを上げていた。辻妻が合うなとセイヤは思った。

「そうよ! 私がアリッサ! 有難うね! あの子を救ってくれて」

 アリッサのいうあの子とはセレスティアルガンダムのことだった。

 勘のいいセイヤは頭の中で見事に思い当てていた。そのためにアリッサと意見が合いそうだった。

「凄い機体ですね。あれが……ガンダム」

 手に残った感触を確かめるように持ち上げて見てみた。二度と乗れないかも知れないガンダムにセイヤは興奮していた。

「ハハ。だよね! うん。……死んだテストパイロットのことは気にしなくてもいいからね? セイヤ」

 この時にセイヤはセレスティアルガンダムに搭乗していたパイロットが亡くなったことを知った。

 あの時は人命を取るかセレスティアルガンダムに乗るかで必死だった。選んだ道に後悔が漂い始めた。

「俺は! どうすればよかったんでしょうか! これが本当に正しかったことなんでしょうか!」

 悔やんでも悔やみきれないでいた。未来は誰にも分からない。分かっていても心の衝動が大き過ぎていた。

「守りたかったんでしょ? なにもかもを。あるな。若気の至りって奴だよね。でもいい? 究極の選択が付き纏うのが戦場なの」

 答えになっていないことにセイヤは失望した。大人の世界の嫌な部分を見たセイヤは納得がいかなかった。

「なんですか、それ。答えになっていませんよ」

 半端な答えになるのが大人の世界ならセイヤは子供のままでありたいと思い始めていた。

「だね。私の駄目なところだよ。セイヤはこうならないでね。んじゃ」

 セイヤは凄く馬鹿にされているような気分だった。今は他人に構うほどに余裕はなかった。

 機嫌を損ねたセイヤの後ろに男性が近付いていた。この事に勘のいいセイヤは八つ当たりの入った振り返りを見せた。

「なんですか! 一体!」

 振り返ったと同時に腕を空振りさせたが当たるほどに男性は近付かなかった。

「うむ。子供か。……おっと自己紹介が遅れたな。儂の名はセルタス。ここの艦長をしている」

 初めて見る艦長にセイヤの気持ちは昂りを見せた。とくに今後の処遇に期待していなかったことも要因になっていた。

「懲罰房入りですか! それとも――」

 ガンダムに出合った者は過酷な運命になると信じていたセイヤは自棄になっていた。

「いいや。違うな。我が隊はこれよりエンピリアルガンダムの奪還及び破壊作戦に出る」

 寝耳に水だった。てっきり月の裏に行くものだと感じていた。まさかこんなことに巻き込まれるなんて思いもしなかった。

「君には……ガンダムのパイロットになって貰いたい。どちらにせよ。このまま帰す訳には行かんのでな」

 これが現実なのかと未だに悪夢なのではと急に思いたくなってきた。この艦長は本気で言っているのかと疑うほどだった。

「そうやって呪われていくんですね」

 宿命とも捉えられる呪いはガンダムならではのようだった。艦長のセルタスもまた異論はなかった。

「そうかも知れんな。だが今ここで期待できるのは君しかいない……ということだ」

 こんなにも納得のいかないことがあるだろうか。でもそれでもセイヤは責任を放棄したくなかった。

「分かりました。共に呪われましょう、ガンダムと共に」

 こうしてセイヤはセレスティアルガンダムのパイロットになると決心した。

 敵はあのネオジオンだ。確か名はフーゲルと言ったか。この時のセイヤは悲劇の最後を知らないでいた。

『艦長! 敵影を確認! これは……連邦です!』

 どうして連邦さえもセレスティアルガンダムを狙っているのかがセイヤには理解出来なかった。

 でもセイヤはセレスティアルガンダムのパイロットになるしかなかった。

 これがセイヤ達を取り巻く人生最大の動乱であることに今は誰も気付かなかった。

 果たしてセイヤは無事に生き延びることが出来るのだろうか。
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