第1話

文字数 924文字

 「では次回の外来は、12月27日でいいですか?」
 令和4年、今年も早、終わりを迎えようとしている。
 「早いですねぇ~、今年ももう終わりですねぇ~。」
 「んだの。」
 「次回外来でお目に掛る時は、雪は降っていますかね?」
 「んだ。」
 「今年は雪は多そうですか?」
 「多いの。今年はカメムシが多いからの~。」
 ここ庄内をはじめ降雪地帯では、「カメムシが多い年は大雪になる」という説がある。

 カメムシは、カメムシ目・カメムシ亜目に属する昆虫の総称で、刺激を与えると、強烈な悪臭を放つ。この悪臭に由来して、「屁こき虫」や「ヘッピリムシ」などの俗称でも呼ばれる。
 日本国内だけでも1,000 種類以上が確認されていて、果実や野菜などに深刻な被害をもたらすため、農家にとっては害虫として扱われている。
 カメムシの寿命は1年で、7月頃に卵から孵化し、幼虫は8月頃には成虫になりそのまま越冬する。翌年春になると活動し始めて5月から6月にかけて産卵し、秋までには死亡する。
 カメムシが多いと大雪になる説の理由として、カメムシは翌年の大雪を察知すると、種保存のため大量に産卵するからとか、成虫で越冬するため大雪だと山里では冬を越せないから人里に降りてくるからなどが挙げられている。
 しかし、実際にはカメムシと積雪量の関係には科学的な根拠はなさそうである( 参考文献:Fall's Page (Weather) > カメムシと積雪量の関係 )

 またある日の外来診察で、
 「今年の雪の予想はどうですか? やはり地元の人の予想は当たりますよね。」
との会話に、80歳過ぎのお爺さんは、
 「んだ、今年は雪は多いの。何しろラニーニャ現象が続いているからの。」
 …!? 田舎であっても地元の経験より科学的見地に立つ高齢者に、恐れ入りましたです、はい…。

 さて写真は 2018年2月18日に撮影した雪に埋もれた飲み物の自動販売機である。
 
 この年は大雪だったが、カメムシが多かったかは記憶にない。ただ、「この雪の積もった極寒の日に、雪をかき分けて冷えたコーラやお茶を自動販売機に買いに来る人がいるだろうか?」と、節電の観点から思ったことを覚えている。

 んだの~。
(2022年11月)
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