2 談話

文字数 372文字

「覚えてないな」
「そりゃそうだ。私が消したんだから。もう数えきれないくらい異世界転生し続けてるよ。たまにバグで前の記憶を持ったまま転生する人もいるけど、ほとんどの人間は覚えていない。何故なら本人が望まないから。長く続く記憶に耐えられないんだ。嫌なことはみんな忘れて新しい人間として生きることを誰もが望んでいる。だからどこかの時点で必ず記憶を失う選択をする。みんなそうだ。考えてみて、今だに一億年分の記憶を持っているとしたらゾッとしないかい」
ユウトは首を傾げた。
「さあ。意外と耐えられるんじゃないかな」
タキシード男は目を丸くして声を失った。
「あんなに記憶を消してくれって頼んできたのに」
タキシード男は笑った。
「じゃあどうするんだ。飛び降り自殺した記憶は保持したまま新しい体を手に入れるかい」
「そっか、そう言うことになるんだ」
タキシード男は頷いた。

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