第2話 油の役割
文字数 1,164文字
脚にすり寄り
飲み水を催促してきたかもしれない猫を
その足で払いのける
今は先輩のコーヒーを淹れるが先決だ
なぜなら先パイは油にうるさい
微粉を取り除いた粗挽き豆に
振りかける
去年までは消臭剤にしかならなかった
コーヒー豆の皮膜
パッと見フケのようなこいつを
ありがたがって口にするようになったのは
あるできごとが切っ掛けとなっている
日焼けでベロリと剥がれてゴムみたいな弾力を持った頭皮の味に似ているんすよー!
知らんがな
少なくとも頭皮の話題から小林逃避したい
__とまぁ
こんなわけで
先輩のコーヒーには皮膜も一緒に淹れることとなった
それまではコーヒー豆の皮膜は排除されてたんだよ
雑味だとかなんとかバカにしてたのにね
へーんなの
コーヒーの抽出中は
少し時間が取れる
コーヒー油分も湯が溶れる
その合間を縫っての水やりだ
コーヒーに使う水と
同じ水である
ネコごときの水に
リッター180円を費やす
水道水はなかなか飲まないのに
カルキ臭のない水は直ぐに飲む
どこにでもいる猫好きの
猫に優しい大男__
きっと
はたから見れば先輩は
そのように思われるのだろう
特殊なフレンチプレス方式で抽出されたそれは
コーヒーオイルの膜に覆われ
湯気が
油断して触ると火傷するところとか
なんか似ている