第2話 油の役割

文字数 1,164文字

うなーん
のど乾いたか?

先に先パイコーヒー淹れなきゃだから

ちょ〜っと待ってろよ〜

脚にすり寄り

飲み水を催促してきたかもしれない猫を

その足で払いのける


今は先輩のコーヒーを淹れるが先決だ

なぜなら先パイは

油にうるさい(からだ)だからだ

コーヒー皮を

パッパッパ〜♪

微粉を取り除いた粗挽き豆に

振りかける


去年までは消臭剤にしかならなかった

コーヒー豆の皮膜

パッと見フケのようなこいつを

ありがたがって口にするようになったのは

あるできごとが切っ掛けとなっている

似ている……

どうした小林
なんかの味に

似てるんすよ

こいつは……

コーヒー豆の皮膜か?

昔食べたアレに似てるんすよ

この味
食ったのか?
っだ

だ〜いジョーブっすよ小林

思ったほど苦くなかったっす

ならいいんだが……

調子悪くなったらすぐに言えよ

へ〜い
ところで__
なにに似てるんだ

これ

え〜先ぱ〜い

小林にそれ聞いちゃうんすか〜?

それとなく話題を振ったのは小林だろ
言わなきゃダメっすか
くどい

アレに似てる味なんすよ

えっと……剥がれた皮の味に……
っは?
あゝ

もう!

日焼けでベロリと剥がれてゴムみたいな弾力を持った頭皮の味に似ているんすよー!
・・・
聞いてすまん
いいっすよ

もう

っで

なんでコーヒー豆の皮膜と味が一緒なんだ

小林頭皮は

知らんがな

少なくとも頭皮の話題から小林逃避したい

もういいとは言ったけど

流石にそりゃないんじゃないかなあ?!

はっはっは
話を進めると

コーヒー豆の皮も

小林の頭皮も

どちらもなんすよね

そうだな
皮って

油分が豊富なんすよ

水を大切にする生き物は

保水成分である油で満たした皮に身を包んで

水が逃げるのを防いでいるんじゃないかな〜って

なるほど

いただき!

ひゃい?
小林

これからはコーヒーに皮を積極的に入れてくれ

っえ?!

小林の?

コーヒー豆の皮に決まっているだろ!
__とまぁ

こんなわけで

先輩のコーヒーには皮膜も一緒に淹れることとなった

それまではコーヒー豆の皮膜は排除されてたんだよ

雑味だとかなんとかバカにしてたのにね

へーんなの

うな〜〜〜ん
おやおや

どうしたんだいエルメスや

甘ったるい声出しちゃって

喉でも乾いてるんじゃないっすか?
うな〜〜〜ん
ちゃ〜んと

水の補給してやらないとな〜

はいはい

今やるっすよ

コーヒーの抽出中は

少し時間が取れる

コーヒー油分も湯が溶れる

その合間を縫っての水やりだ

◯◯水な!
コーヒーに使う水と

同じ水である

うな〜ん
ネコごときの水に

リッター180円を費やす


水道水はなかなか飲まないのに

カルキ臭のない水は直ぐに飲む

よしよし

いい子だ

たーんとお飲み

どこにでもいる猫好きの

猫に優しい大男__



きっと

はたから見れば先輩は

そのように思われるのだろう

抽出完了♪

もう少しで飲めるスよ〜

おう!
特殊なフレンチプレス方式で抽出されたそれは

コーヒーオイルの膜に覆われ

湯気が(のぼ)らない


油断して触ると火傷するところとか

なんか似ている

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色