第0話

文字数 836文字

ホームルーム教室の立ち並ぶ廊下から右に曲がり特別教室や準備室の並ぶ廊下へと出へと進む。一番奥にある使用頻度の低い階段のすぐ手前にある生徒会室の扉を開ける。
「こんにちは」
「おー要ちゃん。ちわー」
「...」
中央の六つ机をくっつけて作られた島の入口から見て一番奥の右側に座りこちらにヒラヒラと手を振っている黒髪の女生徒は彼、輪総要の先輩であり生徒会副会長の京楽ゆりだ。そしてもう一人、生徒会長である篠宮京はその向の席でこちらに声をかけることもなく読書を続けている。
「まだいっちー来てないからのんびりしててよ」
「はぁ、わかりました」
いっちーというのはこの生徒会の会計を担っている女生徒で、彼女もまた輪総にとっては先輩だ。

輪総は三年生三人に囲まれた、たった一人の二年生だ。本来ならここにもう一人二年生がいたはずだが、残念ながら立候補者がいなかったらしい。輪総も教師に頭を下げられ、渋々生徒会になったわけだが、不在のもう一人は教師にどれだけ頭を下げられても折れなかったということだろう。発足当時京楽が「今年の新入生は鋼の意思を持っているね~」と苦笑していた。

「おつかれ~やっぱり待った??」
輪総が席に着き筆記用具や必要なものを鞄から出し広げ終えると、ちょうど図ったかのように生徒会室の扉が開く。そこに立っているオレンジの髪を子供が使うような髪ゴム二つに結んだ女生徒は、待っていたいっちーこと仙道市子だ。
「んーん。要ちゃんも今来たとこだし、終礼は仕方ない仕方ない。」
申し訳なさそうに小走りで席に着く仙道に、京楽がなんてことはないとへらへらと声をかける。
「始めるぞ」
気が付けば先程まで読書をしていた篠宮が完全に会議を始める態勢に入っている。恐るべきスピードだ。
「はーい。じゃあ今日も小林先生不在だけど...」
てきとうな担当教師がやってこないの今更なので、誰も気に留めることはないない。
「会議始めます。礼!」
副会長の号令と共に軽く頭を下げる。

こうして色々と足りていない生徒会の会議は始まる。
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