第4話

文字数 1,367文字

おまけ①【きつね】













 「斎御司さん?知ってっけど」
 「なんか大変らしいよ。処分されるかもって」
 「え?あの人何かやったの?」
 「どうせ濡れ衣でしょ。桃源って奴が仕組んでるんじゃないかって。碧羽から聞いてない?」
 「聞いてない聞いてない」
 「なんで?」
 「それ俺に聞くの?俺が聞きてぇんだけど?」
 「あ、そっか」
 「何」
 「碧羽は相裏が苦手なんだ。運転荒いから」
 「嘘だろ。お前の方が荒いと思うぞ。車酔いするくせに荒い」
 「荒くない。相裏が飛ばせっていうから飛ばしてるだけで、普段は静かに30キロくらいで走ってるし」
 「それはそれで迷惑だから止めろよ。流れに乗るって大事だからな」
 「で、俺達はどうすんの?」
 「どうするって?」
 「手助けにいかないの?」
 「手助けって言ったって、相手桃源だろ?」
 「え?知り合い?」
 「お前忘れたの?」
 「え?なんかあったっけ?」
 「ああ。そっか、あの時お前車酔いして気持ち悪いって言って、おトイレ籠ってたんだった」
 「おトイレって何」
 「前に、ボンネットに人乗せて馬鹿みてぇな運転して、8人を次々に轢いてった奴いたろ」
 「いた」
 「で、そいつのこと調べたら、上層部の阿呆の息子と、官僚の息子だってことがわかってさ、証拠持って同時に捕まえに行こうみたいな感じで、俺達は官僚の方行ったじゃんか」
 「あのすごい無駄に広い庭の家か。枯山水とかあった」
 「そうそう、庭師さんやりがいあるだろうなー、みたいな庭」
 「で?それと桃源が何?」
 「で、その立派な家に行ったとき、そこに桃源がいたんだよ。鉢合わせ」
 「え?どういうこと?」
 「それがさ、危険運転の証拠突きつけたら、『それはこの方のご士族ではありません』とか言ってよ。捏造されたとか騒ぎだしたんだよ」
 「どういうこと?」
 「確かじゃねぇんだけど、あいつ政治家とのパイプも持ってんだよ。ぶっといやつ。折角そいつが運転してた映像録画もよ、桃源が裏から手を回して削除させたって話だし」
 「その情報碧羽たちに渡したの?」
 「渡すも何も、証拠が全部消されたんだって。そんときの映像全部消されて、写真も燃やされて、全部示談で解決させてやんの。記録も何もねえの」
 「遺族の話くらい聞けるだろ」
 「聞いてどうする?そこからあいつに繋がることなんて出て来ねえと思うぞ」
 「健とかに頼んで」
 「噂だけどな」
 「なに」
 「なんでも、シャドーっていう、7人目がいるらしんだよ」
 「は?」
 「基本桃源、是芳、咲々原、南谷、伏見、横瀬の6人で行動してんだけど、謎の7人目がいるんだと」
 「噂だろ?」
 「そうだけど。じゃあ説明出来るか?証拠をまあそれはもう綺麗さっぱり消してるんだぜ?削除した記録も残さねえの。多分、腕は健と同等かそれ以上。もし健のことバレたらどうする?」
 「でも、健休暇中だって」
 「なら休ませてやれよ」
 「その7人目の存在は確実なの?」
 「ほぼな。どこに潜んでるのかわからねえから、下手に動かねえほうがいいぞ」
 「健以上ってなると、難しいか。俺達がどこまで繋がってるのか知られるのも危険だし」
 「そういうこと。俺達は今回様子見てようぜ。怪しい動きしてる奴がいねぇか」
 「適材適所。わかった」
 「じゃあまずは、パトロールだな」
 「俺が運転する」
 「はいはい、適材適所ね」


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

斎御司(さいおんじ):眞戸部の上司。愛する妻と娘がいるが、娘はある男に惚れている。。。

眞戸部(まとべ):斎御司の部下。飄々としていて、潜入捜査などもこなす。斎御司と将烈に恩がある。

波幸(はゆき):元将烈の部下。淡々と仕事をこなす一方、将烈のことには敏感に反応する忠実な子。

火鷹(ほだか):元将烈の部下。観察力、洞察力に優れている。将烈のことを『将さん』と呼ぶ。

鬧影(どうえい):将烈の同期で、今は波幸と火鷹の上司。将烈が唯一、同期の中では信頼している。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み