第57話  かなりキテる竜王さん

エピソード文字数 4,778文字

さっきの竜王さんについてなんですけど……

できれば魔樹にも話した方がいいと思って

魔樹にも。ですか?

 先に白竹さんに説明したほうが良さそうだな。


 とりあえず、さっき王二朗くんに聞いた事を白竹さんにも説明する。

 竜王さんはちょっと変な性癖の持ち主だと。


 すると白竹さんは、遠慮がちに手を上げたと思えば……

あ、あのあの……それわ。私もなんとなく、そんな気がして
マジですか? 白竹さんも変だと思ったんですか?
あひ。な、なんとなくだけど……

目が怖かった。といいますか……

女の子っぽい感じじゃなくて、視線がずっと……西部くんみたいな男の子っぽい感じで。

そうでしたか。白竹さんもそう感じたのなら、ちょっとヤバイ子かもしれませんね
ちょっと魔樹呼んで来ますね。

お願いします。

あと……今日の事ですけど、偶然白竹さんと出会ったのも、魔樹にちゃんと説明した方がいいと思って

 アイツにあんまり誤解されたくないんだよな。

うんうん。そですね。その方がいいかも。


じゃあちょっと待っててくださいね

 スタタタっと喫茶店の裏へ消えた白竹さん。


 竜王さんの件よりも、アイツの事だ。まず「何で二人一緒なの?」と突っ込まれると想定した方がいいだろう。


 ここはバカ正直に喋った方が良いし、何も疚しいことはしてないのだから。


確かに竜王さんはちょっと怖かった。

今から何処かに行こうよっとか言われましたし……スケベーな男の子みたいでした。


そういえば黒澤くんには……

そういった男の子っぽい雰囲気を一切感じないのです。どうしてだろ……

 白竹さんを待っている間、ここで凛に連絡。

 多分学校から帰ってる時間だからな。



《もうちょいで帰る》


 ラインを送っていると、丁度そのタイミングでリミットを告げる最初の頭痛がきやがった。


 まぁ。ここから二時間の間に家に帰ればいいので、全然大丈夫。問題ない。

くりょ澤くん! 魔樹呼んできたよ

 おっと。白竹さん。迅速な対応ありがとうございます。

 そして魔樹は俺を見るなり、いつもの不満顔で迎えてくれた。

僕に用事って何?
 うわっ。不満顔と言うか、今にもキレそうな顔じゃねーか。
ごめんね。ちょっと魔樹。頭が痛いっぽくて
白竹さんが慌ててフォローしてくれる。
そうなんですか? そりゃ済まなかったな
今から入れ替わろうとしてたのに……
いいから。用件は何?

 そう言いながら魔樹は、顔を手で隠していた。

 こりゃ手短に話した方が良さそうだな。 



 一応先程のやりとりを最初から説明すると、魔樹はすぐに「分かった」と返事する。えらく頭が重いのか、あまり聞いていないのかもしれない。

王二朗くんがそう言ってたんだ。白竹さんに何かがあれば連絡して欲しいと

こういう話は、お前にも伝えたほうがいいだろ?

ありがと。だけどその内容だけで、彼女を疑うのもどうかと思うけど。
 まぁ俺も。今でこそ冷静に判断できるが、王二朗くんのたったあれだけの説明じゃ、そこまで真剣に話すことでも無いような気がしてきた。

そりゃそうだが、白竹さんも何だか感じ取ったみたいで。

まぁ警告として、頭の片隅にでも置いておいてくれ

忠告ありがとう。それなら心配ない。美優は一人で誰かに付いて行こうなんて、そんな事しないから
うんっ! その辺は大丈夫だよ。ホイホイ付いていったりしないのですっ!

 それならいいんですけどね。

 じゃあ王二朗くんの件は大丈夫そうだな。

それよりも美優。何で黒澤と一緒に帰って来たの?

 やはり魔樹はそっちの方が気になるらしい。


それは~その……

別に隠さなくてもいいですよ。素直に言いましょう。

何も悪い事なんてしてないんだから

 きっと白竹さんは、俺のワンダーワールドに気を使ってくれてたのだろう。

 

 だけど魔樹に誤解されるのはどうかと思いますので、ここは俺が説明する。

へぇ~君にそんな趣味があったとはね
魔樹! お願い。内緒にしててね。くりょ澤くんとの固い約束なのですっ!
はいはい。分かったよ

 薄ら笑いの魔樹に、こっちがジト目をお見舞いする。


 こいつにも俺の趣味がバレたのは遺憾だが、しょうがない。 

 二人で何処かに出かけたのかと誤解されるよりマシだ。

 


 一通り話し終えると、俺は「そろそろ」と言いつつ帰ろうとした。

 すると白竹さんは「今度また一緒に行こうね」と笑顔を見せてくれる。



 だが……魔樹は「ダメだ」と、その会話をぶった切った。

 これには俺も振り返る。


美優。今度は僕もついていくから。この男を信用しちゃならない

 てめぇ……まだ言ってやがるのか。


 まぁいいか。お前が俺の事をどう思おうと構わない。

 その態度がこいつのデフォルトだからな。



 これ以上いても仕方がないので白竹さんに対し「じゃあね」と言った瞬間、俺の言葉をかき消すような大きな声が響き渡る。

魔樹! も、もう許さない……黒澤くんに謝って下さい!

 あの白竹さんが……

 魔樹に対し、マジ顔で怒り出したのだ。



 ※


 詰め寄る白竹さんに対し、魔樹は驚いた様子も見せない。

 それどころか、至極冷静な目を彼女に突きつけるのだった。

美優。そうやって相手を信頼しようとする。

その状態が一番危ない。男なんて……いつ豹変するか分からないんだから

黒澤くんはそんな人じゃありません!
美優っ!
 あぁやべぇ。白竹姉弟が喫茶店前でえらくエキサイトしてやがる。
謝って! 魔樹っ! お願い……彼はそんな人じゃない……

 今にも泣きそうになってしまった白竹さんを見てしまっては、俺も黙っていられなかった。



 詰め寄る白竹さんと魔樹の間に割って入ると、まずは白竹さんに笑顔で接する。

白竹さん。いいんですよ。俺は別に何とも思ってませんからね
ご、ごめんなさい。魔樹は……本当は凄く優しくて……
分かってますよ。俺もね……そう思ってますから

 ああっ。白竹さんの大きなお目目から、とうとう涙が出ちまった。


 その時、背後から「ふんっ」と聞こえてくると、俺は顔色を変えて振り返る。


 全く悪びれていないという態度を見せる魔樹。つまり僕は悪くないって感じだな。




 まぁでも。お前の言いたい事は分かるぞ。


 白竹さんが俺に対し、ある程度だが心を開いているのは分かる。



 だからこそ魔樹は俺を警戒しているのだ。


 あいつの立場になって考えると、お姉ちゃんが騙されるんじゃないかと思い出すと、俺だって……魔樹のような態度を取ってしまうかもしれない。



 それだけ魔樹にとって……白竹さんは大事な存在なのだろう。


魔樹。じゃあこうしよう。

もし白竹さんと会うことがあれば……お前にちゃ~んと連絡するっていうのはどうだ?


今日だって偶然出会っただけだし

 だんまりを決め込む魔樹だったが、今回ばかりは白竹さんにしがみ付かれてしまい「分かった」と返事するのだった。
なんで黒澤くんを信用してくれないの? 聖奈ちゃんだって……黒澤くんはそんな人じゃないって! 絶対大丈夫だって言ってくれたじゃない!
聖奈ちゃんのいう事も信用できないのですかっ! 魔樹!

 エキサイトする白竹さんが止まらない。


 なすがままの魔樹だったが「用事が済んだのなら帰れよ」と言い残し、白竹さんと共に立ち去ってしまった。



 う~ん。こりゃ難しい姉弟だな。


 

 どちらの言い分にも賛成できる俺にとっては、こんなゴタゴタがあるにも関わらず、魔樹と白竹さんには仲良くなって貰いたいと思うのだった。



 あんまりケンカするのを見てるのは、あまり気分的によろしくないんだよな。

 特に自分が原因で言い争うのは非常につらいものがある。

黒澤くんっ!
 帰ろうとすると、再び白竹さんがやってくる。

 すぐにごめんなさいと謝ってくる彼女に、俺は俺の意見を述べた。

白竹さん。あいつはあいつなりにあなたを心配してるんです。

だから……姉弟で仲良くやってください

俺もね。あいつとは仲良くしたいんですよ。だから白竹さんも協力してくれませんか?
は、はひ! 勿論です! 協力するのですっ!

黒澤くん。


今日は……その、ありがとぉございました。めちゃ楽しかったです。

こちらこそ。また遊びましょう。今度は魔樹も一緒にね

私は~二人でも構いませんよっ。


ふふっ。またねっ

おっとやべぇ……めちゃ可愛すぎる。

 俺も飛び切りの笑顔で返し、ようやく喫茶店を後にするのであった。



 後はラインでのやり取りでいいだろ。


 俺だってワンダーワールドを知ってしまった白竹さんとは、末永くお付き合いしたいものである。

 ※


 家に帰ると、凛が笑顔で出迎えてくれる。



 俺がいないのを怒っているかと思ったが、本人はスマホに夢中のようだった。それならそれで機嫌を損ねずに済んだ。



 俺もリビングのソファーで横になり、スマホを弄くっていると急に画面が切り替わる。

 その番号は先程登録したばかりの王二朗くんだった。



 丁度良かった。君にはちゃんと竜王さんとの関係を知りたかったんだ。

さっきは急な話をして済まなかった
いやいや。別にいいけど、さっきの話聞かせてくれない?

 王二朗くんと竜王さんは昔からの知り合いだそうだ。

 いわば幼馴染と言っても過言ではない関係なのだという。


 特に「あいつとは何も関係が無い」と強調してやがる。

 とにかく勘違いだけはして欲しくないとの事だった。

前はそんな事する奴じゃなかったんだけど。被害に遭ってる女の子を知ってる。拉致んのは、この街に引っ越してからはまだやってねーみたいだけど。本当に注意して欲しい

 先程まで信用しきれない感があったが、真面目に話す王二朗くんだった。

分かったよ。まぁ白竹さんは。ホイホイ付いてく子じゃないから大丈夫だと思う
後は……あの体力テストの日にもう一人いたでしょ? 黒髪ロングの可愛い子
あぁ。聖奈のこと?
あの子にも言っておいてくれ。あいつ……「可愛いね」って言ってたから

 聖奈の場合は大丈夫だろ。平八さんもいるし、一人で出歩く事は無いだろう。


 分かったと返事すると、王二朗くんの溜息っぽい声が聞こえてくる。


 でもなぁ……拉致とかは確かにヤバそうな人だな。

正直に言うと、色々と性的な被害に遭う子がいるんだよ
マジか
流石にそれは犯罪だろ。あんな可愛い顔して、とんでもない奴じゃないか。
女なのに、女に興味があるって……竜王さんはかなりキテるな
とにかくアイツが白竹さん達に近づいて来たら、すぐ連絡が欲しい。俺がとっ捕まえるから
 う~ん。王二朗くんが竜王さんを捕まえられるというイメージが沸いてこないんだが、どちらかと言うと、やられてしまうんじゃないかって思うんだけど。
でもさ。ちょっと質問いい? そんなに竜王さんの事を言ってるけども、それでも彼女と一緒にいる理由は? なにかあるのかな?

 ぶっちゃけボロクソに言って回ってるのに、一緒にいるのはどうかと思うぞ。

 嫌なら付き合わなければいいだけだと思う。

……あ、いや。どう説明していいか

 歯切れの悪い王二朗くんだった。

 まぁ一番の理由は、好意があると言うのが本線だが、

だけど、そういう好きとか、そんな感情じゃなくてだな……腐れ縁っつーか……

 お、あっさりと否定されてしまった。

 確かに知り合ったばかりの俺に対して本音は言いにくいか。

分かったよ。今はそれでもいいけど、その内教えて欲しいかな
ああ、ありがと。そう言ってくれると助かる
 無理に聞き出すのもどうかと思うし、追撃はそこまでにしておいた。
とにかく。あいつが一人で現れたらすぐに連絡してくれ。すぐに向かうから
分かった。俺の知りうる場面に出くわしたら電話するよ
……すまないがよろしく頼む

 そこで電話を切ると、天井に大きな溜息を吐いた。



 何だか物騒な奴に目を付けられたのかもしれないな。

 

 だけど、人を守るのは得意分野なので、どこからでも掛かって来いと言うのが本音であった。


 多人数でも一人で勝てる自信はあるし、そんな俺に勝てるのはきっと……


 親父だけしか存在しないだろう。

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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